第3話 山中へ

呆れながら進んでいくと徐々に周囲の竹が少なくなっていく。

そして茹でる前のタケノコの匂いが強くなっていく。

「結構大きくなっちゃってるな」

タケノコをくれる人がいう。

「俺はとりあえず頭が見えてて掘りやすそうなの掘るから、まだ頭が見えてないようなのを探してみてくれる?」

「ジョーさん、タケノコの匂いわかるか?地面から顔を出したばかりの小さいのが柔らかくておいしいんだ」

言っていることはなんとなくわかった。

大きくなってるのは固くてあまり美味しくないのが多いらしい。

先のあたりは柔らかくて美味しかったりもするけどね。

地面から出ていれば、人間の目で見てもすぐにわかるのが多いんだけど、落ち葉に埋もれてわかりにくいのもあるからね。そういうのを探してほしいらしい。

そうはいってもいたるところから土の匂いに混じってタケノコの匂いがしている。

僕は特にタケノコの匂いを強く感じる場所を探した。

当たりをつけて落ち葉を軽くかき分ける。

あった。

タケノコの先が見えて、僕は軽く吠えた。

「さっそく見つけたか」

横で見ていた飼い主がスコップで掘りはじめた。

そんなことを繰り返しているうちに、たくさんのタケノコが集まった。

タケノコをくれる人と飼い主は持ってきていた袋にタケノコを詰めていく。

「今日はとりあえずこんなもんなかな」

タケノコは採っても採っても時期が終わるまではどんどん生えてくるらしい。

なんて素晴らしい食べ物。

でも時期が終わると次の年まではお預け。

なんて儚い食べ物。

僕らは帰ることにして来た道を引き返す。

さあタケノコの次はつくしだ。

そう思いながら足取りを弾ませた僕の鼻をふと妙な匂いが刺激した。

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