第5話 終わり
しばらくして、タケノコをくれる人の親父さんと一緒にバケツに水を入れて戻ってきて、火がついていた辺りに水をたっぷりとかけた。
「消えたように見えても火種が残ることがあるんだよ。だから入念にね」
そういいながらスコップで水をかけた辺りを掘り起こし、火種がないか確認して更に水をかけた。
「タバコじゃないか、これ?」
タケノコをくれる人の親父さんがいう。
見ると土の中にタバコの燃えカスのようなものが見えた。
タバコが原因だと、どうやって伝えようか悩んでいたが、手間が省けた。
「この辺りの人がこんなところでタバコなんて吸いませんよね」
「ああ。それにここは道も含めてうちの土地なんだ。隣接した山の所有者がお隣さんでね、そこの人がここを通ることはあるんだけど、それ以外で入ってくるのはほとんどフトドキモノだ」
フトドキモノという言葉は初めて聞いたけれど、多分悪い人のことなんだろう。
親父さんの言い方でなんとなくわかった。
「一時期、不法投棄する連中がいたけど、役所に相談して対策してからはほとんどいなくなったし、あの手の連中が来るとしてもほとんど夜だしなあ…」
「この時期ならタケノコや山菜目当てで入り込む連中かなぁ」
勝手に人の土地に入って、不要なものを捨てていく悪い人たちや山の中に入り込んでタケノコや山菜を採っていく人たちがいるらしい。
タケノコや山菜を採っていく人たちの中には、「山は皆のもの」と思い込んで、悪いことだと理解していない人たちもいて、それはそれで厄介らしい。
「一応、警察や役所に連絡しておくよ。時々俺達も見回りをするようにしよう」
親父さんが言いながら、僕のほうを見て、僕の前にしゃがんで、僕の頭を軽く撫でた。
「今回はジョーさんが気づいてくれたんだって?おかげで助かったよ。ジョーさんが気づいてくれなかったら大変なことになってた」
親父さんは身体が大きくて豪快な人だけれど、僕の頭を撫でる手はとても優しかった。
親父さんの大きな手で優しく撫でられるとなんだか気持ちよかった。
探偵の犬である〜特別編「タケノコ掘りに行こうよ」 なるみやくみ @kuminarumiya
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