第10話 半月山
「半月山」
半月山の展望台は賑わっていた。
そこは山道のどん詰まりにある駐車場である。
アルファロメオの新しいのから古いのまで、車愛好家が集まっていた。
壮年から老年の顔ぶれ、皆単独である。
車の色に負けぬほど、派手な出で立ち。
色とりどり、カラフルな車体はどれもよく磨きこんで光っている。
山の景色を眺めるより、たむろして、しばしくつろぎ自慢と談笑。
まだ紅葉には早く、山の日差しは案外暑い。
私は遠くに臨む、山の稜線を眺めていた。
良く晴れている。
山の重なり、色の妙を楽しんだ。
山の陰は山の形を語り、山の色は山の高さと樹木の様々を語る。
空に浮かぶ雲のかたまりは日の光を一時遮り、山に深い色を表現させる。
半月山のもう一つの展望台へ移動する。
手前に中禅寺湖をはさんで向こうが見える。
空高く、広く。 水、満々と。
山に囲まれた平原、戦場ヶ原。
そこだけ明るい緑が見える。
遠く眺めにふける私の背後が騒がしい。
爆音、今度はバイクの群団である。
大型バイク、ナナハンだ。
上下黒のライダースーツの一団である。
しばらくすると、低く重い爆音を轟かせて、一台ずつ走り去って行った。
今日は、何という日だろう。
山は、良く晴れた空に穏やかに雄大に悠然と、暖かい光の中、柔らかな
色を放っている。
夕闇迫る中、足尾の旧道に入り、迎賓館の建物横を通って帰った。
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