第3話 斑鳩

「斑鳩」


何も好き好んで選んで この姿で 生まれてきたんじゃないんだ


四丁目稲荷へ向かう道。 幼稚園の南側に広めの駐車場がある。

日差しが強い時期には、コンクリ使用の白色の地面が反射して、

まぶしい場所だ。

そこに一羽の白い鳩。

首筋が細く、赤い目が目立つほど、白くきれいな鳩だ。

しかし、白といっても羽に黒だか灰だかの斑が交じり込んでいる。

どこからか、逃げてきたのだろうか。

幾度となく見掛けるが、いつもひとり。


送電線が頭の上を横切る公園を斜めに通り抜ける。

ピラカンサの木が赤い実を豊かに実らせている。

鳩が群がっている。 向かいの木から飛んできたのがいる。

あの、白鳩だ。

白鳩は赤い実に飛びつく。やっと止まって翼をたたもう、啄もう、

しかし灰色鳩に追い払われてしまう。

実のない木に逃げて、細い首を長くしたかと思うと、縮め、

体が右に左に小さく揺れる。 切ない。

私は見上げ見るのをやめ、その場から離れた。


季節は移り、よく雨が降る。 合間の晴れ。

むし暑さはあるが、久し振りの晴れだ。


送電線が頭の上を横切る公園を斜めに通り抜ける。

ピラカンサの木が短く切られてしまっていた。

池は日差しをそのまま受け、水面が白っぽくギラギラ光っている。

木の葉揺れる日陰に、鳩たちが下腹を地べたにべったりつけて休んでいる。

あの、白もいる。


昨日までさんざん降った雨で、体が水浸しのようだ。

羽を乾かしている様子だ。広げた翼が小さくたばになっている。

白い頭は、毛がピンと後ろにはねている。

胸元もたばになっている所がいくつかあり、随分雨にうたれ続けて

いたのだろう。


灰色鳩の中に混じっている白、追い払うものはいない。

ピラカンサの木は、実のならない丸い切り口ばかりの短い木になった。


近くの木から、白のいる地べたに下りてきたのがいる。

灰色ではなく、黒だ。 頭から胸元、首の後ろまで黒い。

体一つ分ほど間をあけて、白と同じ方向にすわる。

気づかうように、微妙に伝わってくる感覚。

もう、ひとりじゃない。


送電線が頭の上を横切る公園を通る。

白と黒に出会う。 黒が白のそばにいる。

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