第2話 ドラクロワ

「ドラクロワ」


薄暗い部屋、少しチラつきのある蛍光灯、古い黒光りするテーブル

そこに宝物のように、特別な物のように、

唯ひとつ置かれた絵画の分厚い本。


昔日の私には 珍しい物に 映った。

恐れ 緊張し 触れてみる。

本の重み 中を覗く

そこには異国の人々の姿が描かれ、畏れ多い物として、

その時から憧れ以上のものとなる。

ウジェーヌ・ドラクロワ。

私が初めて知った画家の名と油絵である。


私の育った旧い家の記憶とドラクロワの底の見えない

池に沈みそうな暗い色調が重なって、油絵に対する概念の一部を作った。

襟を正し、直立し、誠実に、向き合う。

今は、もう、そんなものないけれど。


その頃の私は、漫画が絵のすべてであったのだ。

今では、自分の原点だと感じている。


漫画読む バカになるぞと罵られ 

これは哲学 生きる力を 

心の糧を 紛れもなくそこから学んだ

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