第2話 クラスの視線と、秘密の呼び名

次の日の昼休み。

教室に入ると、やたらと視線を感じた。

……いや、感じるどころじゃない。クラスメイト全員の目がこっちに集中してる。


「神谷~、昨日さくらちゃんとカフェいたよな?」

前の席の中村がニヤつきながら声をかけてくる。

「……見てたのか」

「見たっていうか、あれはデートでしょ~?」


ざわざわ、と周りが盛り上がる。

隣の女子まで「え、二人もう付き合ってるの?」なんて言い出す始末。


そんな中、当の本人――椎名さくらが教室に入ってきた。

そして、みんなの視線を全く気にせず、俺の机の横に座り込む。


「ねぇ、神谷くん」

「な、なんだよ」

「昨日のパフェ、美味しかったね。次は“半分こ”じゃなくて、全部あげよっか?」


……まただ。わざとからかってる。

教室中が「うわー!」「お前ら絶対付き合ってる!」と騒ぎ出す。


「……椎名、やめろって」

「んー、じゃあ、二人きりのときに呼ぶ“秘密の呼び名”でも作る?」

「は?」

「私のこと、“さくら”って呼んでよ」


耳元で小さく囁かれた瞬間、心臓が跳ねた。

教室では笑い声と冷やかしが響くけど――俺の頭の中は、さっきの一言でいっぱいだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る