第6話 シード権争い
チームはベスト8まで駒を進めた。谷津高校戦は接戦となったが、國澤さんが放った決勝タイムリーを池永さんが最後まで守り抜いた。池永さんは中々の好投手である。フォークが抜ける時は本当にダメらしいが、今大会は抜群の安定感を誇っている。三振もバッタバッタ奪っているし、國澤さんを目当てにやって来たスカウトが池永さんに声をかけているのを見た。
京都ならベスト8に入ればシードを獲得できるため、我が校はもう目的を達成したようなものだが、夏に弾みをつけるため勝っておくに越したことはない。
***
部員が視聴覚室に集まっている。そこそこの広さが確保されているから、野球部のむさ苦しい臭いで圧死する危険性は低い。でもちょっと換気はしてほしいと思う。誰かめちゃくちゃ筋トレした人がいる。
3年生のマネージャーの方がビデオを再生する。マネージャー……僕達の代、何故か一人もいないんだよな。國澤さんと池永さんが可愛い子を連れてこいって僕の尻をひっぱたいてくる。
実際、3年生のマネージャーの方々が抜ければ2年生のマネージャーの方々の負担が増大する。練習に支障が出る可能性も無くはない。まあ勧誘は花田にでも任せるとして……。
映像を確認する。
投げている秀明館高校のエース
「この嵯峨根がチームの柱です。秋は大事な試合は嵯峨根が完投しています」
嵯峨根が高めのストレートで空振り三振を奪った映像が流れる。この映像は、行われたばかりの春季大会2次予選の1回戦。この春は背番号10のピッチャーも起用しているようだが、それは点差が離れた場合や実力の離れた高校との試合のみ。言われたように、秋はほとんど嵯峨根が登板してチームをベスト4に導いた。(奇数年の京都府代表は近畿大会に上位2校しか進めないため近畿大会には出られず)
うちが相手となるとこの嵯峨根が登板する可能性は高い。
続いて、バッター陣の分析に移る。注力すべき強打者はただ1人。嵯峨根だ。
嵯峨根以外は身体が細く、バントなどの小技を大切にしている印象を受けるが嵯峨根だけは違う。國澤さんと同程度の力を持っているのではないかと感じるほどのスイングと打球。映像の中で、思いっきり引っ張った打球がフェンスを越えて飛んでいった。
この嵯峨根からいかに打ち、抑えるかが鍵になりそうだ。僕は先発して3イニングほど投げる予定である。1次予選以来のピッチングだ。嵯峨根は……全部歩かせようかな。
それにしても、データ不足を感じるのは否めない。ここで言うデータとは、このような映像を指しているわけではない。
ピッチャーの映像を確認するのはもちろん重要だが、ピッチングのコースや球種を記録して機械に読み込ませ、クセを読み取ることができれば、どこに何が来るか高い確率で張る事ができる。そうなれば全員が4割を超える最強打線も夢じゃない。インテリ筋肉が世の中を支配するのも悪くないだろう。秀明館とは夏にも当たる可能性があるんだし、余計に分析しておく意味がある。
監督に相談してみようか。責任教師の渡会さんに持ちかけるのもいいかもしれない。データ班の結成……うちって、パソコン部とかあったっけ。
***
試合当日を迎えた。
スタメンは以下の通り。(丸数字は学年)
1中 土屋②
2ニ 小林③
3一 高田③
4右 國澤③
5三 碧海①
6左 佐々木②
7遊 松原③
8捕 道房②
9投 柚木①
シード権を既に獲得していることもあって、背番号が二桁の選手も多く出場している。僕は公式戦初先発。負けても大きなマイナスにならないとはいえ、流石に少しばかりは緊張する。
僕が3イニングほど投げた後は、完投した池永さんを休ませるため2年生や3年生のピッチャーを投げさせる予定らしい。さあ、上手くいくかな。
メンバー交換を済ませた。秀明館高校のオーダーを確認する。嵯峨根は4番…………レフト。
書き間違いではない。凝視する。9番ピッチャーに、背番号18番を付けた2年生が入っていた。
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