人魚
猫サカナ
待ち惚け
私は、今日も暗い海から、空へ顔を出す。
けっこう前、いやちょっと前かな?
私は海で生まれ、海で育った、いわゆる人魚だ。でも実のところ私は海が嫌いだった。
だって、海の中は暗くて、遊び相手はいない、話し相手は…いるにはいるけど、強いて言うならそこら辺を気ままに泳いでいる魚くらい。そんな日々が私にとってはとっーーーっても、退屈で仕方なかった。だから、私はそんな狭い世界を飛び出すために、海から出てみたくなった。
でも、親や大人達からはよく『地上は危険だから外には出てはいけない』『地上には凶暴な人間がいるから、海にいた方がいい』そんなことを小さい頃から言われ続けた。
だけど実際に、行ったことある人は1人もいなかったから、本当かどうかなんて行ってみないとわからないよね?
そんな思いが私の体の中を対流する水のようにずっと、ぐるぐる回るようにとどまり続けた。
うぅーん、こんなに悩んでても仕方がない!そう思った私は海へ出てみることにした。
大人たちの目を避けてずっと上へと泳いでいくと、だんだん海の色が明るくなるのがわかった。
もう少しで地上だ!
そう思うと嬉しくなって、上へ泳ぐ速さが浮き足立ってだんだん早くなる。
(水面が見えた!...)
ザブーン、と水しぶきを立てながら、空中に舞った水の雫が光を乱反射して、まるで真珠のように輝いた。
興奮冷めやらぬまま、私は周りを見渡す。
周囲には一面が青に染まり、私の真上でクゥー、クゥーと白い動物が鳴く。
私は初めて見る景色に心が躍る。
ふと、目に入った方を見ると小さい島が見えた。島の方に向かうと、一人立ってこちらを見ている女の子?がいた。
しまった!、私はそう思った。親から人間は危険だから海から出てはいけないと言われたのに、いざ海から出てきて実際に人間に出会う想像を微塵もしてなかった。
私が慌てていると女の子の方から話しかけてきた。
「お姉ちゃん、人魚?」
「そう...だよ?」
間違えた...聞かれたから咄嗟に反応してしまった…。
すると、女の子は後ろを向いて走って行ってしまった。
(どうしよう…大人の人間も呼んで私のことを捕まえちゃうのかな...」)こんな事になるなら最初からちゃんと大人の言うことを聞いておけばよかったなぁー...そんな今更すぎる後悔と恐怖におびえていると、意外にも戻ってきたのは女の子ただ一人だった。
(た、たすかったー…)そう思っている私を不思議そうな顔で見つめながらも女の子は私に貝殻を差し出した。
「これ?、私に?」
女の子がくれた貝殻は外は真っ白で裏側はさっきの雫みたいに光を反射してキラキラ光っている。
そう言うと女の子は、「うん!浜辺を歩いていたら見つけたの!」元気な声で私に伝えてくる。
「ありがとう、でも本当にもらっていいの?」
「いいよ!、それにお姉ちゃん人魚みたいだから似合うと思ったの!」
なるほど、確かに私は人魚だから貝殻は会うの、、、かも?
そう思って自分のミントグリーン色の長い髪に、髪飾りのようにつけてみる。
すると、女の子が「とってもかわいいね!」そう言ってきた、そんな真正面から言われると少し恥ずかしい。
「ありがとう、これ大切にするね!」
「うん、いいよ!」
女の子は元気な声で返してくる、でも突然もじもじしながら私の顔をちらちら見てきた。さっきまでの元気はどこへやら。
どうしたのだろうか?
そう思って私は聞いてみることにした「どうしたの?」
聞いてみると、女の子から頬を赤らめ少し恥ずかしそうに、「お姉ちゃん...私と友達にならない?…」
思いがけない提案だった、でも今まで友達という友達もいなかった私からすればとてもうれしいお誘いだ。もちろん私は快諾した
「うん!、もちろん」
「ちなみに名前は何て言うの?」
「わたしチエ!、お姉ちゃんは?」
「レイ!、じゃあこれからよろしくね」
「うん!」
こうしてチエちゃんと友達になった私は、大人にばれないように浜辺まで泳いで行って、毎日のようにチエちゃんといろんなお話をすることになった。
チエはものしりで私にいろんなことを教えてくれた。例えば…、ものの名前とか?
『空を飛んでるあれは、鳥って言うんだよー』
『えっ、レイちゃん空をしらなかったのー?!』
さすがに空の名前を知らなかったときは驚かれたが、でもしょうがないよね!だって最近まで海の中でずっと暮らしてたんだから。
ちなみに私は海であったこと話を話してあげた。私にとってはとても退屈なものだったが、ずっと地上で暮らしてきたチエちゃんからしたら私の話が逆に興味が沸くらしい。
そんな日常が私やチエちゃんはとても充実してる楽しい日々を過ごした。
____________________________________________
今では前まで私よりも一回りぐ、い小さい背が小さかった、チエちゃんも私を抜かせるぐらいに身長がすっかり大きくなった。
そんなある日の夜だった。
星がポツン、ポツンと煌めいて、空を覆い尽くし、地平線まで続く海が鏡みたいに星空を合わせ鏡のように写し合う。私の隣に座っているチエちゃんはさっきまで普通に話していたのに急に態度を変え、まるで初めて『友達にならない?』と言ってきた時の様に恥ずかしそうだった。何かあったのだろうか?…
すると唐突、「約束しよ」そう言ってきた。
「約束?」
「うん、またここで会うって約束しようよ」
そんなの私たちは友達だから当たり前だ
「うん、もちろん!」
わたしはあの時のよう反応した。
だけど、いつの日からかチエちゃんに会うことはなくなった。
毎日のように、海からやってきても一度も会うことはなかった。
いつものようにチエちゃんとの約束を果たすために海から出ると、いつもお婆さんが浜辺で立っている。
私が浜辺に行くなぜか、よく私のことを見てくるお婆さん。お婆さんは私の顔をいつも見てくるが、なにか変なことがあっただろうか?。でもチエちゃんはこんなに年を取ってなかったはず。
(今日も会えなかったなぁ…)
そう思って、私はまた海へ帰る
でも私は諦めずに待ち続ける、またチエちゃんに会えるまで。
だって、またここで会うって約束したから
人魚 猫サカナ @nekosen22
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