第17話
朝の光が柔らかく図書館の大きな窓から差し込む。雨南は穏やかな気持ちで、久しぶりにゆっくりとした朝を迎えていた。約二週間にわたる治療と休息の時間を経て、身体も心もずいぶんと軽くなっているのを感じる。
彼女が向かったのは、図書館の一角にある小さなダイニングルームだった。木の温もりを感じるテーブルには、シンプルで温かな朝食が用意されている。薄くトーストされたパンが何枚か置かれ、その隣には小さな陶器の器にたっぷりとバターが盛られていた。
雨南が迷っていると、そこへ双子の姉妹、夏幽と春柳が静かに現れた。二人はまるで鏡を見ているかのように似ているが、微妙に異なる表情がそれぞれの個性を際立たせている。夏幽は穏やかで優しい微笑みを浮かべ、春柳は少し照れくさそうに視線を落としていた。
「おはよう、雨南。調子はどう?」夏幽が柔らかく声をかける。
「おはようございます。おかげさまで、だいぶ良くなりました」と雨南が答えた。
三人は並んでテーブルに着く。テーブルの上にはゆで卵、ハムの薄切り、フレッシュな野菜のサラダが彩りよく盛られ、温かいスープの湯気が立ち上る。カップには香り豊かなコーヒーと淡い茶色の紅茶が並び、牛乳の入った小さなピッチャーやクリーミーなヨーグルトの小瓶も置かれている。
雨南はパンにバターを塗ろうかどうか、しばらく迷った。すると春柳がそっと言った。
「バターを塗ると、パンの香りがもっと引き立つわよ。でもそのままでも十分おいしいと思う。」
「そうですね。今日はどちらにしようか…」と雨南は笑みを浮かべる。
三人はゆったりとした静寂の中で、丁寧に食事を口に運んだ。外の世界から隔絶されたこの場所で過ごした日々を思い返しながら、心には穏やかな満足感が広がっていく。
夏幽が静かに話し始めた。「これから先も無理をせず、ゆっくり進んでいきましょう。」
「はい、ありがとうございます」と雨南が頷く。
食事を終えた雨南は、軽くテーブルを拭き、ゆっくりと立ち上がった。図書館の静けさがやさしく彼女たちを包み込む。
窓の外に広がる青空を見上げ、深呼吸を一つ。雨南は図書館を後にした。
時間の扉の少女 紙の妖精さん @paperfairy
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