第8話
丸い飛行物体が滑るように前庭へ降り立った。
前方にそびえるのは、白一色の壮大な建物。
その外観は、古きフランスの宮殿を思わせる均整の取れた造形で、外壁は磨き上げられた大理石のように白く輝き、陽光を受けて淡く銀色の反射を返している。
左右に伸びる翼廊は、視界の端まで届くほど長く、中央の正面玄関には高さ十メートルを超えるアーチ状の扉。
その扉の上には、細密なレリーフで神話の一場面が刻まれ、二体の翼を持つ天使像が左右に寄り添っていた。
窓は縦長のアーチ型で、透明なガラスの奥には薄く金色のカーテンが揺れている。
玄関前の白い石畳を進むと、扉が静かに開き、柔らかな暖色の光が漏れ出してきた。
内部に足を踏み入れた瞬間、雨南は息を呑む。
吹き抜けのホールは天井まで四層分の高さがあり、天窓から降り注ぐ光が、中央の巨大なシャンデリアをきらめかせている。
床は黒と白の大理石を幾何学模様に組み合わせたモザイク。
両側の壁には金色の装飾枠に収められた油彩画や彫刻が並び、まるで図書館というより美術館のようだった。
奥へ進むと、本のエリアが広がる。
ダークブラウンの木製書棚は天井まで届き、棚ごとに小さなはしごが設けられている。
背表紙は金や赤、深緑の革で装丁され、浮き彫りの文字が燭台の光を反射する。
机や椅子も曲線的なフランス様式で、肘掛けには蔦の彫刻が絡み、座面は深紅のビロード張り。
天井のフレスコ画は、天界の楽園を描き、そこに小さな流れ星のモチーフが散りばめられていた。
しかし、この図書館の奥には、一般の来訪者が立ち入れない“特別な扉”がある。
その扉は他の棚に溶け込むように隠され、鍵穴も取っ手も見当たらない。
雨南の目には、それが彼女のために静かに呼吸しているように見えた。
執事が静かに言った。
「お嬢様、こちらが本日お買い求めになった“時間”の入り口でございます」
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