第6話

青白い光がゆっくりと淡く消えていくと、静寂が再び飛行物体の内部を包み込んだ。

「オリジナルマスターコピー転写フィールド発生機器マイノライザバイオ複写システム」は、膨大な情報の読み込みと解析、複写の全ての工程を完了した。


雨南の身体を包んでいたあの透き通るような光は、まるで潮が引くかのように徐々に薄れていき、やがて彼女の全身を覆っていた光のベールは完全に消え去った。


その瞬間、彼女の中に封じ込められていた防御壁が次々と音を立てて戻ってきた。

まずは肉体の防御壁。

テントの外の冷たい空気や、未知の場所で感じていたわずかな不安や緊張がすっと消え、身体は自然な温かさと感覚を取り戻していく。

筋肉や皮膚の感触、衣服の肌触り、呼吸の一つひとつが彼女の体内に鮮やかに戻ってきた。


次に心の防御壁が彼女の内側で静かに組み立てられていく。

これまで薄く剥がれていた感情の壁が確かな厚みを持ち、外界の刺激や内面の動揺から彼女を守るバリアのように再び築かれた。

心の奥底に隠していた不安や恐怖、繊細な感受性が再び静かにまとまり、彼女の精神はひとつの安定した形を取り戻した。


そして最後に、最も深い領域にある身体の防御壁が完全に復元された。

それは単なる生理的な防御を超えた、彼女という存在の根幹をなすバリアだった。

外的な攻撃や精神的な侵入から身を守り、自分自身の核となる「私」を守る砦がしっかりと立ち上がった。


全ての防御壁が戻ったとき、雨南はゆっくりと目を開けた。

裸のまま立っていた彼女の身体は、今や完全に「自分」のものに戻っていた。

外界の光と音、温度や湿度、風の微かな感触までもが体内に沁み渡るように感じられた。


無防備に思えた時間の狭間で、彼女は自分の核を取り戻し、守られたその存在感に包まれていた。

しかし、それは同時に、新たな旅立ちの瞬間でもあった。


防御壁が返還されたその瞬間から、彼女の意識はこれまでとは違う時間の流れへと馴染み始めていた。

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