第3話

雨南が深い眠りに落ちてから、夢の世界は静かに広がっていった。そこで彼女は、自分の大切な何かを差し出す決心をしたのだ。その「何か」はまだ彼女自身の中で曖昧だったけれど、それが自分の時間を手に入れるための唯一の道だと理解していた。


朝日が山の向こうからゆっくり昇ると、雨南は目を覚ました。まだ夢の余韻が身体を包み込んでいる中、テントの外に目を向けると、そこには静かに浮かぶ丸い飛行物体があった。朝露に濡れた草の上に、それはゆったりと浮かび、まるで異世界から来たような不思議な存在感を放っていた。


すると、夢の中で見た執事がパイプをふかしながらテントのそばに立っていた。煙はゆっくりと空へ昇り、朝の冷たい空気に溶けて消えていく。


執事は静かな声で言った。


「時間の対価を差し出す覚悟ができたのですね。これから先の案内を務めましょう。」


雨南はまだ少し夢と現実の境をさまよいながら、決意を新たにテントの外へ一歩踏み出した。


朝の光が柔らかく降り注ぐ中、雨南はゆっくりとテントをたたみながら、執事の言葉を反芻した。時間の対価──それは何なのか。まだはっきりとはわからなかったけれど、彼女の胸の奥には確かな覚悟があった。


執事は丸い飛行物体へと向かい、雨南に手招きをした。


「こちらへ。」


雨南が近づくと、飛行物体の扉が静かに開き、中から温かな光が漏れ出した。中に入ると、まるで時間が止まったかのような静寂が広がっている。


「ここは、特別な空間です。この中で、あなたの望む時間を“買う”ことができます。しかし、その代わりに差し出す“何か”は、自らの記憶、感情、あるいは未来の可能性かもしれません。選ぶのはあなた自身です。」


雨南は深く息を吸い込み、これから始まる未知の旅に心を静かに整えた。


「行きましょう。」

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