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概要
甘く冷たい水が、町をゆっくり蝕む
猛暑と断水に苦しむ町で、唯一の水源となった丘の上の給水塔。その水は氷のように冷たく、かすかな甘みを含み、一口飲むだけで体が軽くなる。しかし、住民たちの瞳は次第に濁り、均一な呼吸と笑みを見せるようになっていく。地元新聞記者の主人公は友人の水質検査員と共に夜の給水塔へ潜入。塔の底で、淡く光る粒子を放ちながら鼓動を打つ、巨大な胎児のような存在を目撃する。それは水と共に町の人々の体内に入り込み、同じ鼓動と呼吸へと同調させていた。住民たちに囲まれ逃げ場を失った主人公は、水面から伸びる冷たい誘いに抗えず、やがて底へと沈んでいく。給水塔の水は今日も甘く冷たく、均一な呼吸を持つ町の人々へと配られていくのだった。
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