夜奈歌影
第1章 夜の食卓
夜。
日本の家の食卓には、ずらりと料理が並んでいた。
炊きたてのご飯、味噌汁、焼き魚、野菜の煮物、そして肉料理。
皆がそれぞれの席につき、箸を動かしている。
絆川は豪快に肉をかじり、汁をすすりながら頬張っていた。
噛みしめる音は大きく、汁は少し飛び散る。
ドイツは眉をひそめて、低い声を投げる。
「おい、冥川。食い方が汚いぞ。食事は秩序を保つ場でもある。周囲への配慮を欠いてはならない」
絆川は一瞬箸を止め、ドイツを睨み返した。
「これが俺の食い方なんだよ! 豪快に食うのが俺らしいし、俺の流儀なんだ!」
その声は鋭く、食卓は一瞬静まり返った。
ロシアが静かにグラスを置き、視線を送る。
「……寒い国でも、食事の時は静かにする。お前のような騒がしい食べ方は……氷より冷たく見える」
イタリアは慌ててフォークを持ち直し、場を和ませようとする。
「まぁまぁ! そんなに怒らなくてもいいじゃないか! ほら、食事は楽しく、美味しく食べるのが一番だろ! ピザをかぶりつくときだって、ソースがはねることくらいあるんだから!」
フランスは肩をすくめてワインを傾け、余裕の笑みを浮かべる。
「汚くても、豪快でも、結局は本人の生き方の反映だよ。だが……テーブルクロスにシミを作るのはやめてほしいかな」
絆川ははっとして目を伏せ、深呼吸した。
「……すいません、みなさん。俺……ちょっと熱くなりすぎました」
その声は、さっきまでの勢いではなく、心の奥から滲み出た「本人の声」だった。
空気は和らぎ、イタリアが笑って肩を叩いた。
「それでいいんだよ! 謝ったら、もうおしまい! さぁ、食べようぜ! 冷めちまうからな!」
皆が再び箸を動かし、食卓は賑わいを取り戻した。
笑い声と料理の匂いが夜の家に広がり、いつもの温かな時間が流れた。
第2章 朝の依頼
翌朝。
窓から差し込む光が畳に模様を描く。
台所では日本が片付けをしていた。
洗った茶碗を布巾で拭き、棚に整えていく。
ふと、日本は七歌に声をかけた。
「七歌さん、すみません。実は……絆創膏が切れてしまっていて……もしよければ買ってきていただけますか」
七歌は迷わず頷いた。
「わかったよ、日本。任せとけ。すぐに戻ってくるからな」
その横で十六夜が小さな声を上げた。
「……私も……行く」
七歌は驚いたように振り返り、にこっと笑った。
「おっ、そうか! 一緒に来てくれるのか! そりゃ心強いな。二人で行けば、買い物も早く終わるしな」
十六夜は少し頬を赤らめながら頷いた。
「……はい。少しでも……役に立ちたいから」
「いい心意気だ!」
七歌は笑顔で応じ、二人は並んで家を出た。
朝の空気は澄み渡り、街へと続く道を軽快に歩き始めた。
第3章 ナポレオンの襲撃
街の薬局に向かう途中。
風が急に重く淀み、空気が張り詰める。
道の中央に、軍服姿の男が立っていた。
背筋を伸ばし、威厳を放つ姿。
その瞳は冷酷に十六夜を見据えていた。
「我が名はナポレオン。財団を継ぐ者……その少女を渡してもらおう」
七歌は即座に剣を抜き、前に立ちはだかった。
「渡すわけないだろ! 十六夜は俺が守る!」
激しい戦闘が始まった。
七歌の剣は鋭く振るわれ、十六夜は必死に風を呼び、援護する。
互角の攻防が繰り広げられ、剣戟の音と風の唸りが街に響いた。
しかし――ナポレオンが不敵に笑った。
「ならば究極を見せてやろう……究極進化――究極形態ナポレオン!」
光と炎が迸り、ナポレオンの姿が変貌する。
鎧は漆黒に輝き、巨大な剣が顕現した。
その威圧感に空気そのものが震える。
「終わりだ!」
圧倒的な力に押され、七歌は地面に叩きつけられた。
石畳が砕け、砂埃が舞い上がる。
第4章 影の七歌の覚醒
「……七歌……!」
十六夜の声は震えていた。
恐怖と焦り、そして必死の願いが混じっていた。
その時――倒れた七歌の体から、黒い影が立ち昇った。
影は形を取り、人の姿へと変わる。
七歌の声で、低く名乗りを上げた。
「影の七歌――魂解、影の音 七つの意味と罪の深さと過去」
七色の光を宿した影の剣が現れる。
その存在は、七歌自身の闇であり、もう一人の七歌だった。
「お前の進化など、罪の一つに過ぎない!」
究極形態ナポレオンの斬撃と、影の七歌の剣が激突した。
凄まじい衝撃波が街を揺らし、石畳が砕け散る。
空気は裂け、光と闇の力がぶつかり合った。
第5章 影と究極
二人の戦いは凄絶を極めた。
ナポレオンは巨大な剣で力任せに押し潰そうとし、
影の七歌は罪と意味を背負った音の剣で応じる。
「俺は……この世界の影! 仲間を守る影だ!」
影の七歌が叫び、音が空を震わせる。
ナポレオンの剣が折れ、鎧が砕ける。
「ぐっ……この俺が……!」
究極形態ナポレオンは膝をつき、最後に影の七歌の一閃を浴びた。
その姿は闇の中に消え去っていった。
静寂が訪れる。
十六夜は震える手で七歌に駆け寄り、その手を握る。
「……七歌……大丈夫……?」
七歌の影は柔らかく微笑み、本体へと戻っていった。
「……なんとか、なったな」
朝の光が差し込み、街は再び静けさを取り戻した。
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