試練継承
第1章 父の呼び声
大草原。どこまでも続く緑の海を渡って、乾いた風が吹き抜ける。
その中を、小さな丸い影――モンゴルが、急ぎ足で進んでいた。
「父さん……本当にここにいるのか?」
自分の声は風にかき消されそうだった。
丘を越えると、そこに立っていたのは巨大な影――モンゴル帝国。
金色の甲冑に覆われ、長槍を肩に担ぎ、悠然と草原を見渡している。
モンゴルが声をかける前に、低い声が響いた。
「来たか、我が子よ」
モンゴルの心臓が大きく跳ねた。
「……どうして、俺を呼んだ?」
「お前の力を見極めるためだ」
それだけ言うと、帝国は槍を地面に突き立て、空を裂くような鋭い視線を向けた。
第2章 試練の始まり
「見極めるって……戦うってことか?」
「そうだ。だが勘違いするな。これは親子喧嘩じゃない」
「じゃあ何だよ!」
「未来を託すための戦いだ」
帝国が踏み込む。地面が揺れ、砂塵が舞い上がる。
モンゴルは慌てて後ろに跳び、弓を引いた。
矢が風を裂いて飛ぶが、帝国の甲冑で火花を散らして弾かれる。
「そんな程度じゃ、何も守れんぞ!」
槍が横薙ぎに振るわれ、モンゴルは転がりながら回避。
「くっ……まだ、終わらない!」
第3章 心の声
槍と矢の応酬が続く中、モンゴルは心の奥で父のかつての言葉を思い出していた。
「何が出ても受け入れろとは言わねえ。だが、乗り越えていけ。お前らになら、できるはずだっ!」
その言葉は嵐の中の灯火のように、彼の胸に燃え広がる。
「……父さん、俺は乗り越える!」
帝国が鋭く言い放つ。
「ならば見せてみろ、その力を!」
第4章 魂解の覚醒
モンゴルは深呼吸し、草原の風を全身に感じた。
空に暗雲が集まり、雷鳴が轟く。
胸の奥で何かが弾けた瞬間、蒼い光が迸る。
「お前になら見えるはずだ」
帝国の声が雷の中で響く。
その声に導かれ、モンゴルの背後に巨大な天空神テングリの幻影が浮かび上がった。
「……これが……俺の……!」
モンゴルの叫びが雷鳴に混じる。
「魂解――テングリノタイコウ!!」
矢が雷を纏い放たれる。大地が裂け、光が帝国を包む。
第5章 父の言葉
光が収まり、草原は静寂を取り戻す。
モンゴル帝国は槍を地に突き立て、重い息を吐いた。
「強くなったな…。お前らならもう、大丈夫だ。」
モンゴルは驚きと安堵の入り混じった表情で立ち尽くす。
帝国はゆっくりと背を向け、歩き出す。
「何が出ても受け入れろとは言わねえ。だが、乗り越えていけ。お前らになら、できるはずだっ!」
振り返ったその目には、父としての誇りが宿っていた。
モンゴルは拳を握り、強く頷く。
「……ありがとう、父さん」
草原を吹き抜ける風が、その誓いを遠くまで運んでいった。
第6章 暗黒の開幕
灰色の雲が低く垂れ込み、街は不気味な静けさに包まれていた。
風が止まり、空気は重く、まるで世界全体が息を潜めているかのようだ。
その中心に立つ男――仮面の戦士、冥川。
黒いマントが風もないのに揺らぎ、足元からはじわじわと闇が滲み出していく。
その圧倒的な存在感は、視線を向けた者の心を凍り付かせた。
「……来たか」
低く、地の底から響くような声。
日本が前へ進み出る。
「お前が……この混乱の全ての原因か」
目は鋭いが、その奥に一瞬だけ、知っているはずの何かを見たような揺らぎがあった。
アメリカが肩を鳴らす。「原因とか関係ねぇ。俺がぶっ飛ばす!」
冥川は仮面の奥で微かに笑う。「ぶっ飛ばす? ……笑わせるな。これはまだ始まりだ」
第7章 激突
先手を切ったのはアメリカだった。
拳に光を集め、「リバティ・ストライク!」と叫びながら、
眩しい星条旗色の衝撃波を一直線に放つ。
しかし冥川は片手を軽く振っただけで、黒い霧を呼び出し、その光をあっけなく飲み込む。
「遅い」
次の瞬間、闇の刃が無数に生まれ、アメリカの身体をかすめながら吹き飛ばす。
「武魂斬炎!」
日本が刀を抜き、燃え盛る炎を纏った斬撃で闇の刃を一刀両断。
爆ぜた炎が夜空を照らし、仲間たちの目に一瞬の光を与える。
「ヴァント・デル・ゼーレ!」
オランダが海風と波を呼び起こし、冥川の足元を削る。
だが冥川は軽く跳び、逆に波を黒い鎖で絡め取った。
ドイツは盾を構え前に出る。「俺が前だ! 下がれ、日本!」
しかし、冥川の拳が盾ごとドイツを押し飛ばし、地面に大きな亀裂が走る。
第8章 圧倒的な闇
冥川は淡々と歩みを進める。
「力はある……だが、弱い。理由があるな」
その言葉に、日本は奥歯を噛みしめる。
仲間たちは一斉に攻め込むが、その一撃一撃が冥川に届く前に闇で阻まれる。
空気はさらに重くなり、視界が揺らぎ、音すら遠ざかっていく。
「このままじゃ……押し切られる!」オランダが叫ぶ。
アメリカは再び構えたが、冥川の目が一瞬だけアメリカを射抜き、その圧に動きが止まった。
第9章 援軍到着
その時、戦場に重低音のような声が響く。
「何をしている、我が息子たち!」
夜空を切り裂くように三つの巨大な影が現れる。
大日本帝国、ドイツ帝国、そしてオランダ帝国だ。
「お父さん!」日本の声が揺れる。
大日本帝国は真っ直ぐ息子を見つめ、「立て、息子よ。ここで倒れるな」
その声には、厳しさと温かさが同居していた。
「オランダ!」
オランダ帝国が低く呼びかける。
「親父……!」オランダの胸が熱くなる。
「見せろ、お前の力を」
ドイツ帝国は静かに剣を抜き、「敵は強い。だが我らは負けぬ」
三つの帝国が前線に立つと、空気は一変した。
冥川はわずかに表情を歪める。「面白い……父と子か」
第10章 仮面の下の真実
大日本帝国が「行くぞ!」と声を張り、
帝国たちと息子たちが一斉に攻撃を仕掛ける。
炎、波、鋼鉄の刃、そして帝国の絶大な力が交錯し、冥川を押し込む。
爆発の光の中、オランダ帝国の一撃が冥川の仮面に直撃。
パキッ――
乾いた音とともに、仮面に亀裂が走る。
次の瞬間、破片が宙に舞い、素顔が露わになる。
「……絆川……?」
日本の声が震える。
オランダは目を見開き、「お前……そんな……」
アメリカは拳を握り、「ふざけんな……」
冥川――いや、絆川は微笑む。
「また会おう」
その言葉と共に、闇の渦が全員を押し退け、絆川の姿は闇の彼方へ消えた。
帝国たちは武器を下ろすが、その場に残ったのは衝撃と疑念だけだった。
第11章 父の呼び声
戦いの夜から数日後、日本は一人、海辺で刀を握りしめていた。
潮風が頬を撫でるが、その視線は海の彼方に向けられている。
「……まだ、届かない」
あの仮面の敵との戦いが頭から離れない。
炎も斬撃も通らなかった――あれでは守れない。
そんな時、背後から低く響く声がした。
「何をしている、息子よ」
振り返れば、そこに立つのは大日本帝国。
漆黒の軍服に包まれた巨体、その瞳は鋭くも温かい。
「お父さん……俺、もっと強くなりたい」
「ならば来い。お前の限界を超えさせてやる」
第12章 挑戦状
特訓の場は無人島。
岩壁と密林、そして荒れる海に囲まれた過酷な地形だ。
「ここで、お前は私に挑む」
大日本帝国は長刀を抜き、刃先を海風に向ける。
「挑むって……本気で?」
「無論だ。息子を鍛えるに、手加減など不要だ」
日本は刀を構え、深呼吸。
「行くぞ……武魂斬炎!」
炎が舞い上がり、一気に踏み込む。
しかし――
カンッ!
その一撃は父の長刀にあっさり受け止められ、火花が散った。
「悪くない。だが、その程度ではあの仮面の奴には届かぬ」
次の瞬間、父の刀が海を切り裂き、大波が襲い掛かる。
第13章 限界突破
波を斬り裂きながら、日本は必死に食らいつく。
「はぁっ!」
炎の斬撃、連撃、足運び――全てをぶつけるが、父は全て受け流す。
「力任せだ、息子よ!」
大日本帝国の斬撃が空気を裂き、日本の肩をかすめた。
その痛みよりも、心に響くのは父の言葉だった。
「力は十分だ。だが、お前にはまだ"覚悟"が足りん」
「覚悟……?」
「己が全てを捨ててでも守りたいと思えるもの。それがあれば、刃は必ず通る」
日本は息を荒げながらも、目の奥に炎が宿る。
「だったら……今、見せる!」
第14章 父を超える一撃
再び構える日本。
刀先が微かに震えているのは疲れではなく、燃える決意の証。
「行くぞ!」
炎が再び刀を包み込み、だが今回はただの斬撃ではない。
父の言葉を胸に刻み、全身の力と心を一点に集めた。
「――武魂斬炎・絶!」
轟音と共に、炎の刃が一直線に走り、大日本帝国の守りをついに切り裂く。
ドンッ!
衝撃で砂浜が抉れ、二人の間に熱風が吹き抜けた。
大日本帝国は一歩下がり、静かに刀を下ろす。
「……強くなったな。お前なら、もう大丈夫だ」
その声は、誇りに満ちていた。
第15章 旅立ちの決意
夜、焚き火の前で父と子は並んで座っていた。
波音だけが響く静かな時間。
「息子よ、何が出ても受け入れろとは言わん。だが、乗り越えていけ。お前になら、できるはずだ」
「……あぁ、必ず」
日本は立ち上がり、刀を腰に差す。
その背中には、迷いも恐れもない。
「仮面の奴……次は必ず斬る」
月明かりの下、炎のような瞳が輝いていた。
第16章 兆し
静かな夜。日本、ドイツ、オランダ、アメリカが揃って作戦会議をしていた。
だが、その空気を破るように、外から低い声が響く。
冥川(仮面姿):「……見つけたぞ」
ドイツ:「っ……! お前は誰だ!」
日本:「待ってください……あの声……どこかで……」
冥川は何も答えず、黒い霧を足元から放ち始める。空気が冷え込み、息が白くなる。
冥川:「――魂解、『影滅ノ幽葬』」
地面に這う黒い波が、一瞬で会場全体を覆い尽くした。
オランダ:「なっ……! 力が……抜け……」
アメリカ:「クソッ、動きが鈍る……!」
第17章 闇の優勢
日本が武魂斬炎を抜こうとするが、刀身に絡みつく闇がそれを封じる。
大日本帝国(遠くから現れ):「息子……その刀は……!」
日本:「お父さん……!」
しかし、大日本帝国が駆け寄る前に冥川が踏み込み、アメリカを地面に叩きつけた。
冥川:「お前たちの光など、とうに消えている」
オランダ帝国(空から降り立ち):「親父の名を汚すわけにはいかん……行くぞ、オランダ!」
オランダ:「ああ、親父!」
第18章 反撃の火
日本:「武魂斬炎――解放っ!」
刀から迸る炎が闇を押し返し、一瞬だけ視界が開ける。
大日本帝国:「それだ、息子! 闇に飲まれるな!」
ドイツ帝国(背後から冥川へ突撃):「これ以上はやらせん!」
冥川は素早く仮面をかすめる一撃を避けるが、頬にかすり傷が走った。
冥川:「……ほう」
その声は妙に楽しげだった。
第19章 仮面の割れる瞬間
日本、大日本帝国、オランダ親子、ドイツ帝国が同時に突撃。
冥川:「――来い!」
刹那、ドイツ帝国の剣が冥川の仮面を割った。
パキンッ――
現れた顔に全員が息を呑む。
アメリカ:「まさか……お前は……」
オランダ:「絆川……だと……?」
日本:「……そんな……」
冥川(微笑み):「次は……もっと深い絶望を見せてやる」
第20章 闇の退却
冥川は霧を一気に濃くし、全員の視界を奪った。
冥川:「今日はここまでだ……アメリカ、また会おう」
闇が晴れた時、そこに冥川の姿はなかった。
アメリカ:「クソッ……逃げやがった……」
大日本帝国(静かに):「息子……あれは……」
日本:「……はい……俺の……友……いや……」
皆の胸には、再会の予感と、拭えぬ不安だけが残った。
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