考察者解らせ

目が覚めると『無意味なことをしなければ出れない部屋』とだけ書かれてる真っ白な部屋にいた。酔いつぶれた結果誰かの家に泊まり込んでいたならまだわかるのだが俺は昨日酒を飲んでもないし…いや、そもそも昨日のことが良く思い出せない。何もすることがなかったから俺は昨日のことを遡ってみた。






「なるほど!そういうことか!」


The一人暮らしといった簡素な四畳間の部屋の中で俺はいつものようにアニメを見てはその表象したいものを考察して、納得しては手を叩き、勝手に充実していた。そうやって毎日感動に満ち満ちてはPCを開いて、自分のブログにアニメレビューを書き込んでいく。


このアニメは一見家族愛をテーマにしているようだけれど、愛の定義を曖昧にすることで人を洞察するとき愛の側面も感受出来て人生が


とここ迄書き込んだ時ドアが乱暴に開かれた。友が来たのかと思い後ろを振り返ってみると、全く知らん人が乗り込んでいた。驚きのあまり座ってた椅子から転落し、そいつを見上げる形となった。闖入者は黙々とこちらに近づいてくる。俺は様々な推測を出しては反駁し、出してはを繰り返しながらいつもの調子を取り戻そうとした。しかし逡巡するのは全て絶望に帰着して俺の精神を蝕んでいくばかりだった。自壊するように血の気が失せて世界に目の前のそいつの足しか見えなくなったとき、頭の上から鼻に詰まったような声が聞こえて来た。


「ワレワレハ宇宙人ダ」


…?


宇宙人の設定が古典的過ぎて逆に冷静になり、ドッキリを疑ってそいつの顔をもう一度よく見てみたがやっぱり全然知らん人だった。


「誰ですか」


「ワレワレハ宇宙人ダ」


四畳間にて、立ちすくんでいるものとそれを見下ろすもの、こういう展開は生活が、いや人生のターニングポイントとなりやすい(アニメに限った話だが)。


…俺のいまの自己欺瞞やら目の前の人間やらアニメの曲がじゃかじゃかなっている部屋やら、どことなく絵面がシュールで笑いが込み上げてきたが変な奴だと思われたくなかったので堪えることにした。


「変な奴だと思われそうだなって…w」


宇宙人と名乗る奴からそういってきた。思考をいじられたことに動揺し、え?と素っ頓狂な返しをするとそいつは説明を始めた。


「あなたの思考は喧しい。なにもかもにも意味があると妄信してなんでもない事にも意味を見出してしまう。病的なあなたの癖のせいであなたの人生は窮屈になっているんです。例えば、意味もないジョークなのにその真意を考察しようとするでしょう?」


「はぁ…」


「だから意味のなさを見出してください」




ここ迄思い出せたがその先がぼんやりとしている。しかしここに閉じ込められるまでの経緯は掴めた。宇宙人は俺に無意味なことをやらせようとしているんだ。


だけどなんで宇宙人は俺に無意味なことをやらせようとしてるんだよ…


意味が解らない…




「あ、なるほど」




同時に彼は絶望したらしい

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