第17話

5日目 7月5日(土)


 目覚ましをかけていなかった僕は、朝8時過ぎに起床した。

「ふわぁ~」

 大きく体を伸ばしてから起き上がった。僕はリビングで朝ごはんを取った後、お昼過ぎまで自室のベットでごろごろしたり、スマホをいじったりした。要するに何もしてないということだ。普段の過ごし方と変わらないのだが、なんだか背徳感というか、見えないかから逃げている感覚が常にあった。

 午後からはバイトだ。結局、なんだか分からない疲労感の中僕は十分ほど自転車を走らせ、バイト先のコンビニにたどり着いた。

 今日はいつも以上にやる気がなく、正直休んでしまいたかったけれど、一昨日も休んだのと、何より今週の出費を埋め合わせるだけのお金が必要だった。

 惰性の中、僕は品出しを行い、人数が少なった時間にはレジ前でただ、ぼぉーと宙を見ていた。店内が静かになるほど、僕の頭の中で誰かの声をフラッシュバックした。

「成田くん、お客様」

 僕は店長に言われて初めて目の前にかごをお客さんがいることに気づいた。

「失礼いたました」

 僕はかごを受け取り、商品をスキャンしていく。


「お疲れ様です。お先に失礼します」

「うん。お疲れ様。しっかり休むんだよ」

 結局、今日はなんだか意識が虚ろで、ミスをしてばっかりだった。挙句の果てには店長に熱でもあるんじゃないかと心配される始末。全然そんなんじゃないのに、何だか申し訳なかった。

 このままじゃだめだ。僕は次のバイトには集中して業務をするため、いや、これは言い訳だ。心の中で繰り返される昨日の彼女とのやりとりをなくすため、何かをしなくてはならない。




6日目 7月6日(日)


 と、言ったものの、僕は昨日のバイトの疲れが残っていたのか、昨日同様8時過ぎに起きた。朝食を取ってしばらく、自室の椅子に座り、意味もなく左右に自分の体を動かした後、僕は行動することにした。

 取り敢えず、僕は先週体験したあの謎現象の手がかりでも探そうと席を立った。ただ、外はあいにくの雨、それに何から手を付けていいのか全く分からなかった。

「はぁ~」

 ため息をついて、ベットに寝転がると、不意に彼女の言葉を思い出した。

 僕は本棚の端に埋まった1・2年生の時の古典の教科書をパラパラとめくった。何がなんだかさっぱりだ。そもそも、教科書には訳が書かれていない。しっかりとメモをしていなかった自分が悪いのだが、せめて訳ぐらいは書いておいて欲しいと当時から思っていた。

「そういえばテストの直前で秀に教えてもらったっけ・・・」

 仕方がない、別の手段を考えよう。

 僕はカバンから適当なノートを取り、1ページ分破って後、それを机に置き、ついでに筆箱からシャープペンを一本取った。

 ぼくは机においたノートの1ページに今週起こったことを思い出せる限り書いた。

 こうやって書き出してみると本当に色々やったんだと痛感する。でも、ほどんどが彼女の功績だ。

 同じように弁天島に行き、金沢に行き、そして、京都にいった。

 ただ唯一、彼女との相違点があった。それは彼女とも話したけれども、僕の夢には彼女がいて、彼女の夢には僕はいなかった。

 思い当たるとしたやっぱりこのくらいだ。でも、それが何を意味しているのかは分からない。単なる偶然なのか、それとも意味があることなのか。

 結局、考えても考えても分からなかった。

 なんだか考え疲れて、ベットでだらだらと寝転んでしまった。

『お前、サッカー選手になるんじゃなかったのかよ』

 思い出したくないことまで思い出してしまった。

 そう言えば、サッカーを諦めた後、しばらくして弁天島にいったんだったけ。その時にあの神社で。そういえば・・・。


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