二章04話 遥かなる風景・・・
王城の外は、すでに景観が、変わっていた。王都を徘徊していたアンデッド達は、王都と共に焼き滅ぼされて、王城の正門前に石碑が、慰霊碑として建てられた。滅んだインベリア王国、新たな国となったインベリア王国が、慰霊碑に刻まれていた。
雨が続きやすく、色とりどりの紫陽花が咲く頃、慰霊碑へ献花と一緒に、数万体の
今年で、十度目になる、田植えであった。
Nazarick第九階層の
「これが、故郷・・・稲だよ、お嬢」
私が記録したデータクリスタルを、源次郎は納めながら、
「故郷?」
「原風景って奴だ、かつて、ヤマトが日本征覇を遂行する中で、水田が日本全国に広がっていった」
「稲が原風景なの?」
リアルの西暦2138年に、水田など存在しない。
「そうだ、お嬢。稲の広がりが、日ノ本の広がり、日ノ本は日本国になって、日本人が生まれたんだ」
「えっと、日本人になったってこと」
「あぁ、昔から、日本に住んでいた人も、国が滅び追われて、日本に住んだ人も、一天万乗の大君が下に赤子とれば、国の宝として扱われる」
「サトル君が良いな」
「ははは、お嬢の王子様は、サトルか?」
「まぁね、好きだよ」
本人の前で言えないけど、他のギルメンには、普通に話せる。
[newpage]#02 グライア・ファスリス・インベルン
アンネ・ファスリス・インベルン(CV:クミコ=ぶくぶく茶釜)とサトル=モモンガの間で生まれたのが、グライア・ファスリス・インベルンであった。アンネとサトルの受精卵に、キーノの父親の遺伝子と身体情報を実装して、生まれた男の子であった。
元々王族であった、アンネに配偶者として、父グライアと婚姻したので、父親のミドルネームは、ファスリスではなかった。子供として生まれた時、グライア・ファスリス・インベルンと名付けることで、ファスリス家の一員に迎えた形をとった。
「スズキの方が、良かった、サトル」
「え、
「そうかい、嬉しいねぇ」
二人で笑っていた。
アンデッドの姿ではなく、遺伝子と身体情報から構築した、アンネ・ファスリス・インベルンの人間体「アンネ」は、アンデッドのアンネを
王城の前には、水田が広がり、子供達が草取りをして、青々と広がる稲の色が青々と広がっていた。エルダーリッチの指示で、草取りや水位調整といった作業を、子供達がおこなっていた。子供達にとって、アンデッドは先生であり、魔物を退治するモノであった。サトルは、
キーノ・ファスリス・インベルンも、「キーノ」になることもあるけど、
アンデッドが、人の姿を取ることは、低レベルではできないし、高レベルでも維持することは難しいので、人間の姿で居ることは、かなり無理をしなければならないと言われていた。実際に、
[newpage]#03 インベリア王国に広がる、原風景
グライア・ファスリス・インベルンが生まれたことで、インベリア王国については、一通りの区切りをつけたことになる。赤子になってしまった、父親を、複雑そうに見ながら、キーノは、子供達が稲の刈り入れをするのを、遠目に眺めていた。
「良かったかい、キーノ」
「大丈夫です、これが、新しいインベリア王国です」
滅び去った王国、王城に面影は残っていても、周囲は大規模土木治水事業を進めて、水路を縦横に引いて、アンデッドとゴーレムに耕された稲穂が広がっていた。子供達は、王城で暮らしながら、広大に広がる稲穂だけでなく、耕された圃場で、野菜も育てていた。子供にすべての田圃を世話できないので、多くの田圃や圃場は、アンデッドが働いていて世話をしていた。
田圃が描く、四季は、故郷の原風景となる。
冬になれば、インベリア王国に雪が降り、真っ白い雪が大地を覆っていく。積もった雪が雪解けとなって、川に流れ込んで溜池の水位が上昇すると、アンデッドが耕した大地に、王城で下水処理を行っていた
水の干上がった田圃に、木々の新芽が芽吹く頃に麦を植えて、紫陽花の蕾が芽吹くと、麦を借り入れて、溜池に集まった水を田圃に流し込んで、水田の風景が広がっていく。
紫陽花の咲く頃に、種籾から育てた苗を、
夏に気温が上がっていく中で、気温に合わせて水位調整を進めて、草取りをコマメに繰り返し、青々と田圃に広がるようになるまで、稲の成長を見守る生活が続く。
秋となって、田圃いっぱいに、稲穂が覆う頃、アンデッドやゴーレムによって、稲刈りの季節となる。葦で造った棹に、刈り取った稲束をかけて干していく。
「ここに源次郎さんが居たら、泣いてましたね、クミコさん」
「ん。そうね・・・Nazarickに居るといいね、サトル君」
終了前日のサトルと
データクリスタルから、この世界の種子に遺伝子と種子情報を実装して、種籾を造り、育てることから始めていた。これで十回目の稲刈りだった。麦と米を二毛作の形で、造ることから始めて、アンデッドやゴーレムを使って、年々作付面積を拡大させていって、今では市街地は跡形も無くなって、王城の南側には水田が広がる風景が広がっていた。王城はの北側には、様々な木々が植えられて、
「桃栗三年柿八年・・・」
縄文文明という記憶文明の名残は、それぞれの地域に合わせて、詩に残されていた。
桃と栗は、収穫が始まり、植林地域を増やしていた。柿も実るようになって、植林地域を拡大計画がすすめられていた。
「さすがですね、クミコさん」
「え、この詩を覚えてたのは、やまいこ姉の御両親だよ」
「そうなんですか」
サトルが、驚いていた。やまいこ姉の両親は、アーコロジーの中に住む富裕層で、水耕栽培で育てられる、野菜を工場生産していて、庭木に桃と栗に柿を植えていた。桃栗柿は、高額で取引されていたが、やまいこ姉がオフ会で、一度だけ持ってきてくれて、ギルメンで、欠片を食べたのが、本物の木の実を食べた最初で最後だった。餡ちゃんも、ほとんど食べたことが無いって言ってたから、普通に食べれるような金額ではなかったんだと思う。
王城が建っている山に、桃栗柿を植えながら、薪用の木を伐採しながら、木を植えて育てていった。
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