二章05話 滅ぼすべき敵を求めて

[newpage]#01 敵の位置

 グラニエッゾ碑文の置かれた城に、サトル=モモンガ、クミコ=ぶくぶく茶釜、キーノ・ファスリス・インベルンが出向いていた。グラズン・六花ロッカが、躯の内陣を控えさせ、蛆蟲マゴットは娘シエルと一緒に、六花ロッカの傍に控えていた。


 内陣4人、外陣17人が控えていた。滅ぼされたメンバーも多かったが、グラズン・六花ロッカと「舎弟盃」を交わすことで、内陣4人外陣17人は、グラズン・六花ロッカと疑似親子となった。


 碑文の城で、頂点なのは、クミコ=ぶくぶく茶釜となるので、ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeが、蒼とピンクの盾を装備して、玉座についていた。

「報告を」

 六花ロッカの言葉で、インベリア王国だけでなく、周囲にもアンデッドが大量発生した地域があって、大量の報告資料が纏められ、地図上に記載されていた。


 徘徊するアンデッドの町や村は、非常に広範囲に渡っていて、インベリア王国の王都が、端っこに位置していることが確認されていた。


 樹木も枯れ果てて、山崩れ等で埋まってしまった地域もあったけれど、概ね200kmほどの円形に広がっていた。中心にケイテニアス山が確認されて、山中に原因となる敵が居ると推定されていた。

「我らを支配していた、アレと同じ、アンデッドの竜王と想定されます」

 敵は、八欲王と戦っていない、もしくは逃げ隠れしていた竜王の可能性が高い。

「始原の魔法か?」

 ピンクな声が、可愛く響くと、ギャップが凄まじい。

「はッ。私は竜を斃したことがありますが、若い竜は位階魔法しか使えないと確認しています、師匠」

 応えたのは、六本腕に双頭のバネジエリ・アンシャス。六本の腕に武器を装備して、接近戦から魔法戦闘までこなすが、ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeとの決闘で、攻撃が一切当たらず、一方的にぶん殴られた結果、クミコ=ぶくぶく茶釜を師匠扱いしている。

古の竜王Elder Dragon Lordと若い竜の区別は、八欲王の世界征覇と重なるのぉ」

 色素が抜け落ちたような、純白の毛皮、紅瞳は紅く燃えるように煌いた神狼が、厳かに語った。

「フェン。ちょっと来い」

「え、それは・・・」

 クミコの命に、言葉を濁すが、横でピキっと嫉妬と怒りを浮かべる、バネジェリの気配に、仕方なく玉座に近づくと、ピンクの触手を伸ばして、毛皮を梳き始める。そのままピンクの触手が弄り倒すと、神狼の身体は、ひっくり返るように腹向けとなり、ピンクの触手に弄られるままになっていた。

「くぅーん」

気持ちよさそうに呻く姿は、北方で賢者と呼ばれし古狼Elder Wolfには見えない感じで、弄られまくっていた。

「ケイテニアス山については」

「生き物の住まぬ枯れ山、雨に崩れ、岩肌が剥き出しとなっていて、かなり大きな洞穴が見えると・・・ご命令通り、中の確認はしていません」

 こちらの戦力等を確認させないため、余計なちょっかいをせず、近づかぬように命令していた。


[newpage]#02 古竜Elder Dragon Lord退治へ

 紅眼公クルーヌイ・ログ・エンテシ・ナの居城は、ケイテニアス山から西にあって、東にあるインベリア王国と反対側になる。以前は、召喚したエルダーリッチやデスキャバリエ達が警護していたが、サトル=モモンガによって滅ぼされ、サトル=モモンガに下って、<舎弟盃>を受けていた。


 紅眼公は「True Vampier」であり、「始原の魔法Wild Magic」の被害者であるらしい・・・紅眼公は四十年前に、この地で領主をしていた。自身のタレント<反射リフレクト>が発動し、意識そのものは奪われなかったが、アンデッドとなった。

 周囲には、誰も生き残っては居なくて、アンデッドとなって徘徊するだけの者達となっていた。

 二十年の歳月をかけて、魔法を覚え、様々に試したが絶望だけが残った。徘徊する配下や領民を、自らの手で滅ぼし、焼き払って供養をしている。

「つまり、敵は竜王Elder Dragon Lordのバンパイアって確率が高いわね」

「私も御一緒したいが、やはりダメか」

 仇討ち・・・

「だめだ。言ったはずだ、ケイテニアス山の近くにあった国では、アンデッドは徘徊していない」

 調査で確認できたのは、徘徊するアンデッドは、ケイテニアス山に近づくと、減っていって、廃墟だけが残されていた。アンデッドが、ケイテニアス山に移動していったらしい跡も発見できた。

「近づけば、意識を奪われるか・・・」

「可能性だけど、それを試す気は、無いわよキーノ」

「クミコ姐」

 前から言われていた、キーノも、しょんぼりしていた。


[newpage]#03 竜とアンデッド

 サトル=モモンガは、クミコを見て、

始原の魔法Wild Magicは、ワールドアイテムに匹敵すると思いますか、クミコさん」

「匹敵すると考えて、行動すべきね、サトル君」

「了解・・・」

 応えながら、サトル=モモンガが、考え込んでいた。

「どうしたの、サトル」

キーノが、心配そうに訊くと、

「いや、竜王が、アンデッドになった理由って、なんなのかなって・・・」

疑問を浮かべた、サトル=モモンガに、一同が驚いて、毛皮を梳くピンクの触手も止まっていた。


 ドラゴンに寿命は無く、増大する巨体と、向上する能力は止まらない。

 魔法のようなスキル、「始原の魔法Wild Magic」が使えるなら、アンデッドになる理由が無い・・・

「負けたからではないかの・・・族長殿」

 触手から逃げ出した、賢狼が、サトル=モモンガに応える。内陣と外陣は、グラズン・六花ロッカの「舎弟盃」を交わして、傘下となり、碑文に刻まれていた。賢狼からすれば、トップになったのが、グラズン・六花ロッカだが、六花ロッカしもべとしての「盃」を交わしたのが、クミコ=ぶくぶく茶釜であり、クミコ=ぶくぶく茶釜と「契り盃」を交わしたサトル=モモンガは、旧深淵の躯のメンバーからは、族長と呼ばれるようになっていた。

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