二章03話 新たな|金髪白肌虹瞳《アルコパーナ》達

[newpage]#01 生まれた赤子

 キーノの侍女であった、ナスターシャの姉、女騎士アベリアの遺伝子と身体情報を実装し、多様性幹細胞を受精した卵細胞として、六花ロッカの子宮に着床させて、赤子として育てることとした。十月十日の後、元気な女の子が産まれ、碑文の城に赤子の鳴き声が響き渡った。

「おんぎゃぁ、おんぎゃぁッ・・・」

「生まれたよ、元気な女の子だ」

 クミコが抱き上げて、検査を進めていく。人間種の赤子、性別は女、髪は金色、白い肌で、光彩が虹色をした、滅び去った民族、金髪白肌虹瞳アルコパーナの特徴を持った子供が誕生した。胎内で育てたのは、白銀の髪に、白い肌に紅瞳を持った、“白の聖女”グラズン・六花ロッカであるが、遺伝情報での親子関係は無い。


 赤子の泣き声が、響き渡ったことで、アンデッドであった、女騎士アベリアは、金髪白肌虹瞳アルコパーナとして生まれ変わったことになる。

「実験としては、成功・・・キーノ」

「・・・はい。意識を持たない、徘徊している、アンデッドは、転生はできるんですね、クミコ姐」

 白麗の骨格ををした、アンデッドの最上位、オーバーロードなサトルが、白い布に包まれた、アベリアを抱き上げながら、

「凄い、動いてますよ、クミコさん」

 白い白磁のような、細い骨の指を、アベリアの小さな手が、握りしめていた。

「あ、握った、握ってくれました。可愛いです」

 サトルは、赤ん坊を弄り、はしゃいでいた。

「サトル、子供は、これから増えるんだ、今からそれじゃぁ大変だよ」

「え、キーノ。うん。わかってる、でも可愛いんだ」

 サトルにとっては、初めての子供だ、リアル世界では見ることができない。西暦2138年のリアル世界は、生まれてから半年は、病院に預けられて、赤子は保護される。しかしながら、保護期間中の費用は、両親の借金となり、両親が借金を拒否すれば、赤子は孤児となって孤児院に預けられる。


 リアル世界では、赤子を親が育てるのは、金持ちでなければできない。


[newpage]#02 アンネ・ファスリス・インベルン(CV:クミコ=ぶくぶく茶釜)

 アンネ・ファスリス・インベルン陛下によって、前世と同じ、アベリア・キニスキーという名を付けられ、インベリア王国の王城で育てることとなった。住民すべてが、アンデッドになって徘徊する、王都インベリアルの王城からは、徘徊するアンデッドは一掃されていた。

 白麗の骨格、アンデッドの最上位オーバーロードサトルは、「アンデッド作成」を使うことで、デスナイトやデスウォリアに魂喰らいソウルイーターを作成することができる。何も無く、「アンデッド」を作成しても、時間が経過すれば消滅するが、徘徊するアンデッドを媒体とすると、時間が経過しても消滅しないアンデッドを生成できることが確認された。


 しかし、「アンデッド作成」を使うと、遺伝子と身体情報が喪われるので、本人の遺伝子と身体情報を保管した上で、「アンデッド作成」を進めていった。

『キーノ。保管はするけど、全員は、厳しいからね・・・』

クミコは、サトルに聞かれないように、キーノと念話で会話する。

「はい」

小声で、キーノが応える。

 王都の人口は、十万人を超えたくらいで、女性を優先しても、かなりの歳月がかかる。

 赤子が泣き出したので、アリシアがサトルから赤子を受けとって、横になっていたグラズン・六花ロッカに渡すと、授乳を始めていた。出産を終えた、六花ロッカは、愛しそうに赤子を抱き上げていた。

「愛しいかい、六花ロッカ

「はい。無縁と思っていたので」

 人間としての人生も短く、アンデッドで二百年以上暮らした、グラズン・六花ロッカにとって、自分の子供というのは、存在しえないモノであった。


 かつて、女騎士であったアベリアが、遺伝子と身体情報が同じで、別の人間として生を受けた場合、倫理的にどうなるかはともかくとして、新たな生を得たのは間違いなかった。滅び去ったハズのインベリア王国の血を、金髪白肌虹瞳アルコパーナの身体を持つ娘が生まれた。


[newpage]#03 赤子達が生まれて・・・

 インベリア王国の王城に、子供達の声が、溢れるように響いていた。すべてが、金髪白肌虹瞳アルコパーナの子供達で、全員がインベリア王国女王となった、アンネ・ファスリス・インベルン(CV:クミコ=ぶくぶく茶釜)の赤子として、育てられていた。

 アンデッドとなった者達は、もはや元には戻れない・・・それでも、転生を図ることはできる。

「どう、思う・・・六花ロッカ

 研究室に籠る、六花ロッカに、クミコが尋ねた。

「御姐様。私自身もですが、魂は同じではない・・・そのように感じます・・・

 グラズン・ロッカから記憶を喰らって、グラズン・六花ロッカと名付けられた時、私自身が生まれたと感じました」

 数十人の子供達の中には、旅をしている中で、引き取った金髪白肌虹瞳アルコパーナではない子供も含まれていた。六花ロッカという研究者にとって、孤児達には生命いのちに関する実験体という、意味合いも含まれていた。

 遺伝子と身体情報は、あくまでも物理情報に過ぎない、魂という本人の情報は、肉体という魄には本人が刻まれていないということらしい。


 今日は庭の芝生で、子供達は、敷物を引いて、サンドイッチのような携帯食で、昼食となっていた。

「「「「「いただきます」」」」」

 子供達の声が響いていく・・・・食事を終えると・・・

「「「「「ごちそうさまでした」」」」」


 子供達の教育には、日本語が使われて、漢字と平仮名が用いられて、教えられていた。

“深淵の躯”が集めていた、膨大な研究書類も、徐々に日本語に訳されて、原書と共に王城の書庫に保管されていた。

 異世界補正か何かは不明だが、この世界では、言葉に不自由はしない。ただ、読み書きは、ほとんどの住民が、読み書きできないこともあって、記録された文書は、ほとんどが読むことができなかった。サトルが持っていた、魔道具の片眼鏡モノクルを使うと読めるけれど、魔道具は、クミコが持っていないので、“読解の魔法”で読み進める必要があった。エルダーリッチを召喚して、日本語の読み書きを教えて、子供達に用いる、教科書の木版と書籍の制作を進めていた。

「何故か、数字は、中央諸国家でも、使ってるのよね」

「はい、御姐様、八欲王以来と、言われています」

 この世界でも、リアル世界で使われていた数字が使われていて、八欲王がこの世界を支配して以来、数字が使われるようになった、そんな伝承が伝わっていた。

「八欲王ねぇ・・・」

 たぶん、プレイヤ、しかもトップクラスのギルドが保有していた、天空城に類似していた。竜王達との戦いの結果として、勝利して世界を支配したけれど、仲間割れで滅び去ったと伝えられている。ギルドAOGがこの世界に来た時、争わないという保証は無い、あけみにやまいこ姉が残っていたら、そんなことにはならないと思うけど、ギルメン同士が争ったら滅びることになる。今のところ、ギルドAOGとNazarickについては、情報が何も無い。

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