二章02話 その名、クミコ=ぶくぶく茶釜

[newpage]#01 碑文に刻まれた名前

<クミコ=ぶくぶく茶釜>

 碑文の最初に、クミコの名が、「クミコ=ぶくぶく茶釜」という形で、刻まれていた。

「何故、サトルじゃないんだい・・・」

「私にとって、御主人様は、御姐様です。サトル様は、御姐様の主です」

「ふぅーん」

 クミコが、盃を交わしたのは、サトルだけど、

「盃を、直さなかったんだね、サトルは」

「はい・・・いけなかったでしょうか」

 不安そうな六花ロッカに、

「私の主は、サトル、いいわね」

「はい」

「なら、いいわ」

 アンデッドの組織である、“深淵の躯”は、アンデッドの互助会として始まっていた。碑文には、グラズン・ロッカの名前が最初に刻まれ、内陣・外陣のメンバーが刻まれていた。


 白の聖女と呼ばれていた、アンデッドなグラズン・ロッカの身体から、遺伝子と身体情報を抽出し、人間体「六花ロッカ」を生成、グラズン・ロッカの記憶を喰わせて、種族変換を試みた結果、種族変換に成功して、グラズン・六花ロッカという形で、碑文に刻まれていた。アンデッドの互助会から始まった“深淵の躯”が、新たに再構築されて、異なる組織として碑文に刻まれていった。


[newpage]#02 新たなる実験へ

 キーノが求めたコト、

「アンデッドの国民を、元に戻したい」

そんな、キーノ・ファスリス・インベルンの想いから、実験をおこなった結果であった。アンデッドになっても、元の身体について、遺伝子情報と身体情報は残されている。吸血姫となったキーノ・ファスリス・インベルンから抽出した、遺伝子と身体情報から、人間体「キーノ」を生成した。


 都市に居た、アンデッドの一体から、遺伝子と身体情報を抽出し、人間体を生成した。だけど、人間の意識や記憶が戻らず、徘徊する人間となっただけで、人間体を維持するために、食事等の行動もしなかった。生体が維持できなくなり、壊死していった身体は、結局アンデッドになった。

「御姐様、意識は戻らないのですか・・・」

「あぁ、意識があれば、お前と同じだ。ま、お前への実験は、確認と事前準備さ」

「事前準備?」

「あぁ、六花ロッカには、子供を産んでもらう」

「子供・・・ですか」

 六花ロッカは、驚いていた、かつて人間であった時も、子供を産んだことはなかったからだ。

「そうだ。キーノの侍女だった、実験体には、ナスターシャの姉、アベリアを使う」

 侍女であったナスターシャの姉で、女騎士アベリアであれば、キーノが知っている相手なので、どの程度同じなのかが確認できる。

「わかりました」

「良いのかい・・・しばらく、相手は、できないよ」

 少し笑みを浮かべて、クミコが訊ねると、

「この身、この心、すべて、御姐様に捧げております」

「私の子供だからな、しっかり育てるんだよ・・・」

「はい・・・ぁっ」

 クミコが、六花ロッカを抱き寄せるように、キスをして、褥に押し倒していた。


<<<R-18規制中>>>


[newpage]#03 内陣、死の乗りてDeath Rider

 真夜中であったが、街の薬屋として、ポーションを生成して販売していた、三人の女が、サトルの前で平伏していた。

 一人は、ちょっと年齢は高めだけど妖艶な女性で、一人は同じように妖艶だけど年が若そうな女性、一人は幼そうだけど美人な女性だった。顔立ちは、三人とも同じようなので、血族のようであった。

「お前達・・・いや、姿を見せよ、隠れしモノよ」

 サトルが、カッコよさげに声をかけると、

「サトル、カッコイィ」

傍らのキーノが、突っ込む。キーノの肩口から、ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeがヒョコっと顕れて、

「魔王は、やっぱサトルだね」

 雰囲気からすると、かなり台無しである・・・そんな、状況ではあったが、平伏した三人の女の髪から、蛆蟲マゴットが顕れる。

「話はできるか」

すると、蛆蟲マゴットは、女達の身体に潜り込むようにして、ハモるように、

「「「はい、この身体であれば、話せます」」」

 寄生している宿主を介すると、喋れるらしい。

「名は、あるか」

わらはは、部族で意識を共有します故、名はありませぬ。蛆蟲マゴットとお呼びください」

「人の意識は、あるのか」

 サトルの問いかけに、

「はい。ございます」

「お前達には、名があるのか」

「はい。私の名は、アリシア・ゼルディア、妹のユリシア・ゼルディア、この娘は、私の娘シエル・ゼルディアと申します」

 サトルが確認すると、彼女達は、八欲王と竜王達の戦いに巻き込まれて、滅んだ国の生き残りだった。安住の地を求めて、旅をしている途中で、蛆蟲マゴットに寄生された。アリシアは、寄生されたが、結果的に蛆蟲マゴットと共棲することで、百年の歳月を、妹と共に老化せずに生き延び、二十年ほど前に、娘を産んで最近になって、娘にも蛆蟲マゴットを寄生させたということだった。


 蛆蟲マゴットは、サトルと盃を交わして、キーノと同じように、新生ギルドAOGのメンバーとなった。アリシア達は、クミコの立ち合いで、六花ロッカと盃を交わし、六花ロッカの傘下となった。

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