一章14話 王城のアンデッドを斃して

<Over Lord サトル>

[newpage]#01 王城のアンデッドを斃して・・・

 クミコが創り出す、ピンク色の粘体スライムは、なんというか、風呂やらベッドやら、マットやら、様々に変化して、癒されて楽しくて、魔法の練習や戦闘効果の確認という形で、三日程過ごしてしまった。


 王城のアンデッドは、非常に慎重に対応したけれど、結果的に言えば慎重すぎて、簡単に斃してしまった。アンデッドのレベルも「次元斬リアリティ・スラッシュ」一発であっさりと倒してしまって、さほど、強いアンデッドでもなかった。

 アンデッドの装備も、そのまま、灰となった死体に残されていて、滅んでしまったと判断せざるを得なかった。

 あまりにも、あっけなかったので、敵が他にも居るかと思って、王城を調査すると敵はいなくて、アンデッドの研究書が見つかった。インベリア王国のアンデッドについて、大量に調査報告書が作成されていた。


 報告書は定期的に、提出されていたようで、組織的な活動をしている感じだった。

 報告書と共に、組織のモノらしい、ネックレスが残されていた。


[newpage]#02 言葉と文字

 この世界は、言葉は何故か通じるけれど、文字は読めなかった。数字は何故かリアル世界と同じだったりして、キーノに文字を教えてもらいながら、アンデッドの報告書や、インベリア王国の歴史諸等を、クミコさんが読んでくれて、報告書の要約を纏めて、俺に説明してくれた。

「アンデッドの組織ですか・・・」

「多分ね、王城のアンデッドは、上司か主人かは、不明だけど、誰かへ報告書として、研究成果を定期的に知らせる義務があるみたい、サトル」

 報告書を、日本語で作成して、俺に読めるようにするのと一緒に、クミコさんは、キーノに日本語を教えて、キーノに日本語を理解できるようになってもらっていた。クミコがある程度、この国の文字を読めるようになったけれど、サトルは、日本語での報告書を、私クミコの解説で、理解してもらっていた。

「ごめん、俺が、文字読めなくて」

「こら、サトル。そこは、我儘で良いんだよ」

「そ、そうですか・・・」

「他国に行けば、文字も変わるだろうし・・・記録は、AOGルール日本語だろ」

 “YGGDRASIL”では、世界によって、言葉が異なっていて、

「あ、そうですね、ギルドAOGは、記録は日本語でした」

 DMMO-RPG“YGGDRASIL”は、母国語が日本語と異なる、プレイヤも多く、ギルメンにも居たけれど、ギルドAOGは、「最古図書館Assurbanipal」を設置した時、記録は日本語ですると決めていた。著作権切れの書籍類や各種データは、日本語で保管することを、基本として大量に保管していた。


[newpage]#03 アンデッドを用いた実験の始まり・・・

 王城のアンデッドは、廃都市と同様で、意思が無いアンデッドが、徘徊しているだけだった。徘徊しているアンデッド侍女を捕食して、キーノと同じように、遺伝子と身体情報から、人間体を形成しても、意思が戻ることは無く、瞳にハイライトが消えた、意思の無い人間が徘徊するだけになっていた。


 ただ・・・

「お母様・・・」

アンネ・ファスリス・インベルン。キーノの母親、インベリア王国の王妃様は、人間体「アンネ」を創り上げると、人間体「キーノ」を抱きしめるようにして、離そうとはしなかった。意思が戻ったわけではなく、意思が無く徘徊し、ヴァンパイアのキーノには、何も反応はしなかった。


 意思の残滓・・・完全に、意思が消えたわけじゃない・・・


[newpage]#04 アンデッドの報告書

 王城に居たアンデッドが作成していた報告書は、周辺地域にも、同じようにアンデッドになった国についても、資料が作成されていた。

「周辺国を含めて、あたり一帯が全部、アンデッドに変わった、報告でょには、各地域での調査資料も入っていた」

地域の報告は、インベリア国外も対象となっていて、大量の記録が残されていた。


 インベリア王国を含めた、周辺諸国家の地図?っぽいモノも、王城の執務室で発見された。

「かなり、広範囲に、調べてたみたいね」

 私クミコは、アンネの姿を借り、人間体「アンネ」となって、王城の中を調べていた。

「クミコ様、母様は・・・」

「意思の残滓は、あると思うけど、キーノに反応するくらいね」

王妃の人間体「アンネ」は、同じ人間体「キーノ」の手を、離そうとしなかった。でも、「キーノ」が、アンデッドに戻ると、手を離してしまう。これでも、意思の残滓がある方で、侍女ナスターシャは、人間体「ナスターシャ」となっても、意思の残滓は感じられず、徘徊するだけの存在であった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る