一章12話 俺は、オーバーロード

<サトルの視点>


[newpage]#01 一夜が明ける

 サトルのオスが、滾るように、

 <・・・R-18規制中・・・>

一夜が明けていく。


 紫に煙る夜明けは、第六階層と同じだけど、時間的にはズレがあった。

<メッセージ・・・><メッセージ・・・><メッセージ・・・>

相変わらず繋がらない・・・

(クミコさんは、星の配置も違うって、言ってたけど)

(時間のズレも確かにあって、第六階層は、遥か西の方角ということになる)


 異なる世界だと、<メッセージ>は、繋がらない。ヘルヘイム内では、繋がるけれど、ミドガルズやアルフヘイムとは、繋がらなかった。<メッセージ>そのものが、“YGGDRASIL”とは、違ってしまったかもしれない。


 人間体だった「クミコ」は、ピンク色の肉棒粘体Pink Elder Oozeに戻ったまま、淫らな吐息を吐くように、嬉しそうに眠っていた。人間体「キーノ」は、人間の感覚に、慣れていなかったみたいで、抱きしめただけで、気を失っていた。

 俺自身も、いつの間にか、白麗な骨格Over Lordの身体に戻っていた。

 俺にとって、長かった一夜が、ゆっくりと明けていく。


(クミコさんは、俺にキーノを、抱かせようとしてるのか?)


 クミコさんは、「キーノ」と盃を交わした、そう言っていた。

(俺とクミコさんに捧げる盃かぁ・・・アルベドの時と同じだ)

<ちなみに、ビッチである>と書かれていた、アルベドの設定。

<サトルとクミコを、愛す>と書き換えた。

 クミコさんは、俺に遠慮している・・・


[newpage]#02 愛、故に・・・


 クミコさんは、俺を愛してくれている、それは間違いない。だけど、俺が居ないところでは、俺以外の誰かに愛されている・・・ちょうど、あけみさんのように・・・

 やまいこさんの妹、あけみさんは、第六階層に、良くお茶会に来ていた。亜人種の“YGGDRASIL”プレイヤだ。社会人だけど、異形種ではなく亜人種エルフということで、ギルドAOGに加盟できなかった。


 “YGGDRASIL”終焉の知らせで、クミコさんと「盃」を交わした、あけみさんを、第六階層の湖畔に建てた、Nazarick学園(仮)の領域守護者とした。

「サトル君、私も、クミコ姐が、好きだから」

そう言って、笑っていた。

 あけみさんは、優秀な研究者で、アーコロジーで暮らす、本当の金持ちだ。ギルドAOGの女性陣は、三人とも、アーコロジーに住むことができて、高い部屋代やインフラ費用を払える金持ちだ。


 あけみさんは、Nazarickでは、クミコさんが嫌がるから、あんまりイチャイチャしない。でも、課金してデートしてるって言ってたから、エロゲの課金イベントなんだろうなぁ・・・


[newpage]#03 病気になったクミコさん・・・

 病気で、声を喪った、クミコさん。声優という仕事を失って、アーコロジーを追われてしまった、クミコさん。そんなクミコさんが、俺のところに、来てくれた。俺に会うために、俺の部屋の前で、待っていてくれた。


 有頂天になって、俺は、クミコさんと一緒に暮らした。


 病が重くなって、日々、身体が弱り、咳が酷くなっていくクミコさん・・・


 俺は会社の帰りに、あけみさんに連絡して、お金を借りたいと言ったら、あけみさんは、

「全額出すから、クミコ姐を、説得して」

って言われた。


 クミコさんは、声優・・・治療しても、声は喪われる。クミコさんが、あけみさんのところで無く、俺のところに来た。浮かれてたけど、死ぬまでの間なら、俺に愛して欲しいって言えるから・・・それが、理由だった。


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