一章10話 吸血姫の人間体「キーノ」

[newpage]#01 悪魔の誘い、盃 

 洗い上げて、湯船につかり、ゆっくり時間をかけて、アンデッドの身体をあたためていく。

『キーノ。私のように、貴女の人型も創れるけど、創ってみる?』

「できるんですか?」

 キーノが、思わず叫んでいた。

『アンデッドを人間にはできないけれどね』

「どういうことでしょう?」

『人間として生きていた身体を、アンデッドのキーノが宿る、試してみるかい』

「はい、お願いします」

『その代わり、私に、すべてを捧げてくれるかい』

「それは」

『悪魔の誘いと一緒、すべてを捧げよ、私は捧げられたすべてに応える。約束できるかい・・・キーノ』

 盃を取り出して、水を注ぐ、

「これは」

『「盃事」、すべてを、私とサトルに捧げる、宣誓の儀。盃を飲み干したら、キーノのすべてが、私とサトルのモノだよ。盃を割れば、契約は破棄となる』

 いつのまにか、キーノは、湯から上がっていて、ピンクな粘体スライムの上に、正座していて、目の前には水が注がれた盃が置かれていた。


[newpage]#02 金髪白肌虹瞳アルコパーナな人間体「キーノ」

 盃を飲み干したキーノは、ピンクの粘体スライムに包まれるように、身体を構築されていく。多様性幹細胞に、かつてインベリア王国王女であった、キーノ・ファスリス・インベルンの遺伝子と身体情報が実装され、人間体「キーノ」が構築されていく。

 インベリア王国で、最も多い金髪白肌虹瞳アルコパーナの身体、王家は純粋な金髪白肌虹瞳アルコパーナが、王家の血筋であり、王家の証でもあった。色素が抜けたのではなく、赤い血流が流れ、蒼い筋となって、白い肌に浮かび上がる。心臓の鼓動が、どくどくと、血潮を巡らせていく。

「私は、何をすれば、良いのでしょうか、クミコ様」

『サトルにも、すべてを捧げてくれれば、それだけで良いさ』

「サトル様・・・でも、クミコ様は・・・」

『私は、サトルにすべてを捧げて、愛している。ただねぇ、他にも愛してる相手が居るからね。キーノの御父上は、母上以外には、愛妾とか居なかったのかい』

「近衛騎士団長ユリーシャは、お父様の愛妾として、お母様に仕えていました」

『私としては、キーノに、サトルを慰めて欲しいのさ』

「私が、サトル様の愛妾となれば、良いのですね」

『正妻でも良いけどね・・・決めるのは、サトルだよ』

「わかりました、でも、私で良いんでしょうか?」

 少し、不安そうな、キーノ・・・

『どうしたんだい、キーノ』

「この身体は、女になったばかりで、母様も・・・」

 母様も、私より大きかったけど、クミコ様ほど、大きくなかった・・・




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