一章06話 普段はピンク色の肉棒な粘体、その実態は・・・

<キーノ・ファスリス・インベルン>

金髪蒼肌紅瞳Blonde Albino

種族レベル:

  True Vampire真祖 レベル7

  Lesser One劣化吸血祖神レベル4

職業レベル:

  Vampire Princess吸血姫レベル3

  ソーサラーSorceressレベル8

  セージSageレベル5

  ハイ・セージHigh Sageレベル7

[newpage]#01 練習場所は、巨大な貯水池

 王城を占拠しているという、強力なアンデッドを斃して、王城の書庫や財宝、資料の確保となると、戦闘訓練をする必要がある。

『キーノ。王城から離れていて、身体を動かせる、かなり大きな場所、魔法とかも試せる場所って無いかな』

「そうですね・・・貯水池でしょうか」

『案内してもらえるかい』

「はい」

 キーノの案内してくれた、戦闘訓練の場所は、都市に水を引き込む、地下水道を歩いて行って、城からはかなり離れた、山向こうの貯水池だった。


[newpage]#02 貯水池は、透き通るくらいにキラキラしてて

 大きなドーム状の建物は、今も健在であり、外側の壁から中央に向かって組み上げられたアーチ屋根には柱が無く、貯水池に間隔を開けて林立する柱は、壁を支えるように、壁に向かってアーチを組み上げていた。

「ここで、どうでしょうか・・・」

 綺麗に透き通るような水が、使われずに満水で貯水されている、湖水のように広がっていた。


 壁には複数の採光窓があって、日が差し込んでいて、細波さざなみのようにキラキラと光って、綺麗に輝いていた。

『綺麗ね、サトル』

『はい、本当に、綺麗です』

 CGじゃない・・・本物・・・夜中に見た、煌めく星々は、幻想的で美しすぎていた。けれど、石材が積み上げられた壁、様々な砕石がモルタルに埋まっていて、人工の水辺を包んでいる姿は、人の手で組み上げられた造形美が、本物であると主張していた。


 奥行100m、左右50mの広い空間に、綺麗な水が貯められていた。


[newpage]#03 ピンク色の肉棒な粘体が、声に驚く

 サトルは、キーノに、

「キーノさんは、火炎球ファイヤーボールは使えますか」

「いえ、攻撃魔法は第二位階、魔法の矢マジックアローくらいです」

「了解。撃ってもらっていいですか、確認したいので」

「え、いいのですか」

「はい。お願いします」

「ちょ、ちょっと待って、駄目よッ」

 慌てるように、クミコ=ぶくぶく茶釜が、叫んだ。

「「クミコさん」」

 サトル=モモンガとキーノが驚く・・・

 サトルは、クミコさんの声に、キーノは、ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeが、ずっと念話で喋ってなかったので、喋れたことに驚いていた。

「サトル君は、駄目、駄目よ。あたしに攻撃して、キーノ」

ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeが、喋っていた。

 そして喋った声は、サトルには、懐かしいアニメ声優をしていた、クミコ=ぶくぶく茶釜の声。エロゲがデビューで、“風海久美”という名前を声優名にして、名前を替えながら少しづつ売れるようになっていった、売れっ子声優だったクミコが、かつてと変わらずない声で喋っていた。


[newpage]#04 声優、ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Ooze

 ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeが、普通に喋るというのは、かなりの違和感がある。それも可愛いアニメ声というのは、あまりの違和感に、キーノは言葉を失っていた。

「話せてますよ、クミコさん・・・ライブラリじゃないですよね」

 サトルが、クミコに、声優ライブラリではない、声に出ていると言葉を伝える。


 声帯を移植しても、人間は同じ声にはならない、声と言うのは、人に刻まれた歴史そのもの・・・ライブラリの声だと、声色が限定されて、様々な声や、多彩な表現をしていた、クミコにとってはデビュー時のエロゲ一択なのが残念だった。

「え、そ、そう・・・ね。あぁぁあぁぁっぁあっぁぁぁぁ、あぁぁぁあぁっ・・・」

 クミコ=ぶくぶく茶釜は、声霊ことだまを放つように、声を響かせていく。


[newpage]#05 声優は、声にて語り、歌い逝くを求める

 声優ライブラリにはできない、地声胸声ファルセット裏声の多重奏で、スキャットから響かして、

「あぁぁあぁぁぁぁぁぁ、あー、あーあー、あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁッ、あー、あーあー、あぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ、あー、あーあー」

ビブラートで振るわせて、声を確認していく・・・

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人間五十年、夢か幻か

 草の葉の白露、消える瞬間とき

水面に揺れる、月の影、

 掴もうとすれば、隙間に消える。


この世は、一瞬一瞬に、逝き散る運命さだめ

  夢幻の如く、握れぬ真実。

滅びる前に、叫べ叫べ、無常の風に、飛ばされる前に。


金色の花も、散る運命さだめ

 南楼の月、霞む雲間、

栄華の影、踏みつけて進む、

 この道の果て、どこにある?


この世は、一瞬一瞬、消える。

  夢幻の如く、握れぬ真実。

滅びる前に、叫べ叫べ、無常の風に、飛ばされる前に。

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 幸若舞「敦盛」を編曲して、ミュージカルの中で、ロックに歌い上げる、そんな歌を、舞台で歌い上げた。

 乳幼児死亡率がほぼ0なのに、リアル世界の平均寿命は60歳を切っていた、リアル世界は、本当に人間五十年の世界で、諸行無常が響く世界だった。百年だろうと五十年だろうと、人間の生命いのちなんて、一瞬一瞬の瞬間ときに、消されるようなモノ。

 幸若舞「敦盛」は、平家物語の一節で、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の華の色、盛者必衰のことわりを顕す.

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 祇園精舎の鐘が鳴る、その音は、無常の歌。

 沙羅双樹の華が散り、儚く散る生命いのちの調べ。

 何を掴み、何を喪う。風に散る、記憶の欠片ちり

 握りしめれば、消えていく、春の夢の如くに、散り逝く。

 強き者も、滅び逝く。光と闇が、混ざる空。

 胸に響く、鐘の声、永遠は無いと告げる。

 何を願い、何を残す。風に散る影。

 猛き心も、静かに散る。風の中に欠片チリと逝く。

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 声を喪い逝った私クミコは、異世界夢の世界で、声を取り戻して、異世界夢の世界で歌う・・・たとえ、塵のように滅んでも、私は、異世界夢の世界に残された声を残す。


 







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