一章04話 亡国の御姫様は、吸血姫となった

[newpage]#01 サトルの妻クミコ

 サトルは、慌てるようにアイテムボックスから、ク・ドゥ・グラースが造ってくれた椅子を二脚出して、片方に白麗な骨格Over Lordが座って、キーノに進める。

「どうぞ、キーノさん、座ってください。

 ここの情報について、教えていただけますか。

 私は、迷ってここに来たので、情報が無いのです。

 こちらからだせる対価は、アンデッド用のポーションくらいです」

 そう言って、机の上に、クミコ=ぶくぶく茶釜製、ネガティブ・ポーションを置いた。“YGGDRASIL”でも、貴重品なアンデッドを回復する、ポーションである。

(いつのまにか、クミコさんは、俺の支援が最優先できるように、ビルドを組み替えていたんだ)


 キーノ・ファスリス・インベルンと名乗った少女は、蓋を開けて、一滴手に触れるようにすると、アンデッドの体力が回復するのが確認できたようだった。

「初めて見た、凄い」

「妻が造ったポーションです、俺がアンデットなので、アンデット用にと開発してくれました」

「妻・・・」

『妻・・・』

 キーノは驚くように、クミコ=ぶくぶく茶釜は、ちょっと照れるように、ピンクな粘体Pink Elder Oozeが蠢く。

「驚かないで、いただけますか、キーノさん」

「はい?」

「肩に乗っているのが、俺の妻クミコです」

 ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeの私クミコを、紹介してくれたので、ピンクの触手で手?を振る。


[newpage]#02 アンデッドの少女キーノ

 驚くキーノに、サトルは、ゆっくりと説明を始める。

「驚かないで下さいね、妻は、粘体スライムなんです」

 ぴょこぴょこ蠢く、粘体スライムな姿・・・

「ぇッ・・・」

 キーノが驚いていた。


 アカデミックローブの肩に蒼とピンクの盾伏羲と女媧の盾を装備し、紅玉から30センチほど蠢くピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeは、白麗な骨格Over Lordの妻と紹介された。

 ピンクの触手を伸ばして、キーノに触れて、

『聞こえるかな、キーノさん。私がクミコ・スズキ。クミコだよ』

「は、はい、クミコ様」

『呼び方は、まぁ、好きにして』

 怯えながら、応えるキーノに話すと、触手を離して頭を撫でる。


 最初は、怯えるような感じだったけど、ピンク色の触手は、相手が落ち着くまで、ただゆっくりと撫でるだけだった。キーノが慣れて、触手に手を伸ばすようになると、少しピンクな触手が、キーノの手に浸透する。

『キーノもアンデッドなのよね』

「はい」

 キーノには、念話が、使えないようだった。


[newpage]#03 亡国の御姫様は、吸血姫だった

 キーノの語ってくれた話は、非常に長く、辛い過去話だった。

 かつて、この地に王国があって、キーノは王女として育てられたけれど、ある日突然、住民が全員アンデッドになってしまったという話だった。


キーノが、アンデッドになった日、その話は詳しかった。

「紅い瞳のアンデッド、キーノ・ファスリス・インベルン、始まりの日です」

幾度となく、キーノの中で繰り返され、記憶が確認され続けたのだろう。


 話の中では、生活魔法という“YGGDRASIL”になかった話があり、位階魔法の話が出てきたので、生活魔法が使われている世界で、“YGGDRASIL”と同じような、位階魔法が存在しているようであった。


 キーノは、頼み込むようにして、

「あ、あの、サトル様のお力で、この町の人を、戻せないでしょうか」

「へっ」

「なぜ、国の住民が、アンデッドになったのか、解りませんが、強大な力やアイテムを持つサトル様なら」

 キーノは、強大な力を感じれて、サトル=モモンガが手にしている、ギルド武器SoAOGの力も、感じられるようだった。

「えっと、俺の力ですか、判るのですか」

「少し前、王城にやって来た、強大なアンデットと同じくらいに、強大な力をサトル様と、持っておられる高価なアイテムからも感じます」

 魔力感知マナ・エッセンスを使わなくても、感知能力があれば、サトルの魔力を推定することはできる。SoAOGも、マジックアイテムとしては、破格の性能を持っているから、感知しやすいということだろう。

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