一章02話 廃都市には、アンデッドが溢れてた

[newpage]#01 アンデッドに溢れる廃都市・・・

 <飛行Fly>で、城壁を飛び越えると、都市全体で、アンデッドが徘徊する、滅び去った廃都市なのが確認できた。理由はわからないけれど、住民が意思の無い、アンデッドに変化し、廃都市に変わってしまった、そんな光景だ。


 都市の中を、粘体スライムも徘徊していて、

粘体スライムは、アンデッドは、捕食対象じゃない?)

都市内を移動してる粘体スライムが、アンデッドからは離れていくのを見て、捕食対象では無いらしいと確認した。“YGGDRASIL”の生態では、粘体スライムは、アンデッドを捕食できない・・・同じだと言うなら、ここは“YGGDRASIL”??

『“YGGDRASILⅡ”とか?』

『え、ログアウトできませんよ』

 ログアウトは、電脳法で、義務付けられている。

『それも、そうね・・・』


 廃都市は、修復できず、壊れた家も残っていた。壁の壊れた家に入ると、家の中にもアンデッドが、徘徊している。部屋の中には明かりが無く、暗視night visionを使う必要があり、使って見渡すとシンクがあった。水道の蛇口があって、レバーがあって、レバーをピンクの触手で動かすと、水が流れる。水に触手で触れて、捕食すると、飲料水であることが確認できる。

『ゲームにしては、リアルすぎるわね』

 土と一緒に抜ける草、土を捕食すると、微生物や虫、上水道は魔法道具Magic Item


[newpage]#02 分体スライム

<ぷつッ>

 先程、畑や飛行Fly中に落とした、いくつかの分体は、時間が経過する中でMPが消費され、MPゼロで消滅した。

 分体消滅の感覚が、クミコ=ぶくぶく茶釜に伝わってくる。

『魔力供給されないと、分体が消滅か・・・ならNazarickは無事だよ、サトル』

『分体ですか』

『うん』

 ピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeは、分体を使って、複数の知覚情報を取得できる。並列思考や自律行動を組み合わせれば、別個体としても行動可能だが、活動によって、MPが消費され、MPがゼロになると、分体は消滅する。分体が、魔力保有者に寄生し、魔力供給を受けていると、分体は消滅しない。

『あぁ・・・消滅したら、確認できる。距離が遠く、世界が異なっても、魔力が供給できれば、分体は維持できるからね』

消滅は、“YGGDRASIL”でヘルヘイムだけでなく、ミドガルズや異なる世界でも確認できる。

『結構、色々と、つけてましたね』

『表層にチヨメを配置して、第四階層のグランドマザー、第七階層の“紅蓮”、それにアウラとマーレのお兄ぃちゃん』

『お兄ぃちゃんって・・・パンドラズ・アクターですか』

『練習の時に、相手役してもらってたから、そのままよ』

『じゃぁ、Nazarickも、この世界に、来てるんでしょうか?』

『そうなるわね。かなり遠いから、情報共有はできないわね』

<メッセージ・・・><メッセージ・・・><メッセージ・・・>

『メッセージもダメですね』


[newpage]#03 廃都市の少女

 <暗視Night Vision>視界の端に、動く影が見える、小柄なアンデッドだけど、動きが速い・・・何?


飛行Fly

 白麗の骨格が、肩に30センチ程のピンク色の肉棒な粘体Pink Elder Oozeをヒョコヒョコさせて、サトル=モモンガが、空を舞って視界を広げていく。

 大通りは、大きな城に向かって、南北方向に造られて、綺麗な直線ではないけど、計画的に建設された壁に囲まれた都市が、突如として廃墟になったようだった。つまり、徘徊しているアンデッドは、元々は廃墟になる前の住人で、何らかの原因でアンデッドになったと推定できた。


[newpage]#04 異世界のアンデッドな少女?

 何らかの原因で、アンデッドとなった都市を、状況確認をしながら、散策していると・・・サトル=モモンガは、アンデッドが徘徊し蠢く都市の中に、一体のアンデッドが、遠ざかっていくように、強い意志を持っているようで、かなりの速度で移動していた。

『なんだ、プレイヤ・・・』

『追いましょ』

『はい』

 <飛行フライ>で飛んで、素早く移動しているアンデッドを追いかけていくと、目標は都市の構造を知っているように、通りを駆け抜けて移動していく。


『小柄ね・・・子供?』

 空から確認すると、線の細い小柄な身体で、走っている姿が確認できた。


 フライで回り込むようにして、

「こんばんわ、おはようかな・・・夜明け前で、星が綺麗に見える、良い朝ですね」


「ひぃッ」

 言葉ではなく、ちょっとした悲鳴が響いて、移動していた少女は、尻餅をついていた。手を出したけど、少女は手を取ることはせず、怯えているように、摺り摺りと下がっていった。


 サトル=モモンガは、自分から動かずに、

「突然で、申し訳ありません、幾つか訊きたいことがあるのですが、構いませんか」

 ゆっくりと、言葉を繋いでいく、

「言葉は、解りますか」

日本語が解るのかな・・・


[newpage]#05 異世界の少女キーノ・ファスリス・インベルン


 少女は、コクコク頷きながらも、

「あぁ、ぅ・・・」

怯えたように、呻くような感じで、声が声にならないようだった。


「私の名前は、鈴木悟。サトルと呼んでください。貴方は」


 少し離れて、止まって

「・・・ィーノ・・・リス・・・ルン・・・」

小さな声が響き、少女の声で、繰り返すように、

「キーノ・ファスリス・インベルン」

 それが、少女の名前だった。

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