第3話 「恋の温度」

ある夜、

悠はうつむき加減でカウンターに座った。

ずっと好きだった同期の女性が、

別の男性と付き合い始めたという。


「俺、どうしても諦められないんです。」

麗子は鏡越しに悠を見つめ、口紅を塗り直してから言った。


「愛ってのはね、握った手の温もりより、

その手を離したときに残る寂しさで分かるのよ。それが熱いほど、忘れるのも難しいわ。」


 悠は少し泣き笑いになった。

恋は終わったけれど、心はまだ燃えていることを知った夜だった。

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