3番目の天使
東井タカヒロ
天使の羽
秋になってもまだ夏の暑さが抜けない今日このごろ。孤児院の庭園で水やりをする一人の少女がいた。
「もう秋なのに暑いな」
日光が服では隠しきれない羽に容赦なく照りつける。熱を発散するかのように羽を軽く動かす。
そう、私には生まれつき天使のような白く美しい羽がある。
私は孤児で、どこで生まれたのか、誰が親なのかさえ分からない。
孤児院に引き取られる頃には羽が生えていたとシスターは言っていた。
孤児院を出て働こうと思ったけど、この羽のせいで人々には敬遠されがちで、まともに生活なんて出来なかった。
最近は孤児院から出ようと何度も思ったが、出るまでには至らなかった。
私が6歳の時に孤児院を飛び出した時に様々に人に注目を浴びてTV局まで来たほどだったからだ。
その際、血液型検査をしたが、この世には存在しない血液型だということが分かった。
その時はなんとか収集がついたが、今度同じ事態になった時は収集がつくがどうか分からない。
出たいと思っても無闇に外に出られない。
「この羽さえなければ自由に外に出られるんだけどな」
だけどこの孤児院のみんなは私を受け入れてくれた。優しく出迎えてくれる。
「シスター水やり終わりました。……シスター?」
呼びかけてもシスターは来ない。食堂かな?食堂へ向かっている最中、玄関の方からシスターと誰かの話し声が聞こえてきた。
声のする方へ行くと、そこにはシスターとシスターと警察が話していた。
私はその光景が目に入ると咄嗟に廊下の影に身を潜めた。
孤児院の外の人に見つかっては何が起きるのか分からなかったからだ。
だけど、シスターと警察がどんな話をしているのか気になり、聞き耳を立てる。
「――なので捜査協力して貰えませんか?」
「しかし、」
「協力して貰えればガウラさんのことが分かるかもしれません」
私のことを話している。なんで、あの時からもう10年は経っているのに、なんで今になって警察が!?
「本人もいたほうが良いので呼んでくれますか」
「えぇそうね、今呼んできます。待合室にてお待ち下さい」
え、あ。庭に戻らないと。さっきの話聞いてたのバレたら怒られる。
「ガウラ、お客様ですよ」
シスターが庭へつくとガウラはぎこちない笑顔を浮かべた。
「は、はい今行きます」
持っていたじょうろを片付け、待合室に向かう。
一体何の話なんだろう。里親?それとも捕まえに?分からない。様々な不安を持ちながらも待合室に入る。
「やぁはじめまして」
パイプ椅子に腰掛けて待っていたのはさっきシスターを話をしていた警察官だった。
「さぁ、ガウラも座りなさい」
冷えたパイプ椅子にゆっくりと座る。
「僕は蒲田俊彰で、見ての通り警察官の警部だ。よろしく」
「ガウラです……」
しばらくの沈黙の後、蒲田警部が口を開いた。
「今回君を訪ねた理由は他でもない、君の出生についてだ」
「出生?」
意外だ。てっきり私の羽のことについての事情聴取とかそんなのかと思っていたけど出生。確かに気になってはいたけど……。
「君の出生に関して興味があってね、一緒に調べてみないかい?」
「私自身気になってはいますけど、どうしてそこまでして私の出生について調べてくれるんですか?」
「君の羽、10年ぐらい前かな、気になって調べたんだ。」
この人も私の羽目当てなのか……。
「そうするとね、奇妙な目撃証言があったんだよ。石井研究所の出入り口から君を抱えて走ってる人を見たって言う人がいたんだ。」
「その石井研究所ってなんですか」
「生物についての研究をしている研究所だね。詳しい内情は警察でも調べられないんだ。」
「私の出生が研究所の関係者かもしれないから連絡を取れと?」
「いや、第一君は孤児で関係者の連絡先を知らないだろ?ここからは僕の想像なんだけど、君はあの研究所で生まれた被検体じゃなかったのかなって」
その言葉に一番反応したのがシスターだった。
「警部さん、言って良いことと、悪いことがありますよ」
「やばい実験をしてる噂もありますし、証言もあるんです。その可能性が高いんですよ。研究員はガードが固くて口も聞いてくれませんし」
「……」
「ガウラさん、あなたが出生を知りたいと思うなら僕は全面的に協力します。」
「少し時間を下さい」
「ここ名刺置いておきますね」
テーブルに名刺を残して蒲田警部は帰っていた。
「あの警部さん失礼ですね……ガウラ?」
「シスター少し考えさせてください」
ガウラはそのまま自分の部屋へと向かった。
私の出生。
確かに気になってはいた。
私が被検体の可能性……。
一見適当に言っているようにも見えるが、辻褄が合う。
私に羽が生えてる理由、存在しない血液型。
3番目の天使 東井タカヒロ @touitakahiro
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