本心

過去の黒い記憶をたどった。確かに紫苑視点からだと急に突き放されて悲しかったのだろう。ちゃんと向き合えていなかったと思う。ただそれを謝ったが求められているのは違うのだろう。普段使うことがない眠っている思考をたたき起こして考えていた。

「ずっとさ思ってたんだけれども私の事覚えていた。」

なんで今そんなことを聞くのだろうか。なんで終わっているのに考えていたのだろうか。そう考えないようにしていたことが次々浮かんだ。

「嫌でも考えているよ。なんでそんなこと聞くの。」

少し嫌な笑顔になった。けれども嫌悪感は感じなくただ悲しい顔になっていた。

「もし向き合えていたらまた違ったことになってたのかな。今となっては分からないけれども。ねえどうなのかな。」

それは深く傷がついていた本心からの声なのかもしれない。さっきまでの明るい声はどこか落ち着いている口調になっていた。なんとなく分かっていたけれども僕は知らない事にしていた。その付けが回って来たのだと自覚していた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る