第11話 午前二時の記憶

「よし、次は借り物競走だ!」


カイが叫んだ。午前二時。伝え忘れてたけど、俺の学校ではもう直ぐ文化祭。文化祭の準備で残ってた俺たちは、完全にテンションがおかしくなってた。最終下校時刻なんて、とっくのとうにすぎている。

体育館のステージで、即興のミニゲーム大会が始まってる。なぜか?知らね。でも、これがやっぱ日常って感じで気持ちがいい。やっぱ、俺らはこうじゃなくっちゃな。

ユウはカーテンの裏から謎の衣装を持ってきて、レナはマイクで実況してる。俺はというと、カイに借り物競走で「一番意味不明なものを持ってこい」と言われて、理科室に走った。


暗い廊下を走る。懐中電灯の光が揺れる。理科室の扉を開けた瞬間、空気が変わった。冷たい。静かすぎる。棚の奥に、古い箱があった。開けると、中には――写真。見覚えのない、でもどこか懐かしい風景。俺はそれを持って体育館に戻った。


「それなに?」


カイが聞く。俺は写真を見せた。

「理科室にあった。なんか、見たことある気がして」


カイは写真をじっと見つめたあと、ぽつりと言った。


「それ、夢で見たことある」


俺は息をのんだ。


「俺も、見た気がする。夢の中で」


「じゃあそれ、呪われてるってことでいい?」


ってレナはふざけて笑ったけど、俺とカイは笑えなかった。


「記録の残滓だ」


カイはポツリと呟く。


「誰かの記憶が、形になって残ってる。夢に混ざってた“何か”って、こういうやつだよ」


俺は写真を見つめた。風景の中に、誰かの後ろ姿が写ってる。顔は見えない。でも、確かに“知ってる”気がした。


「これ、俺の記憶じゃない。でも、俺の夢に出てきた」


カイは頷いた。


「記憶って、完全に個人のものじゃない。誰かと繋がってる。夢の中で、記録が交差することがある」


「じゃあ俺の夢にもカイが出てきたら、責任取ってよね」


なんてユウはふざけて言って、みんな笑った。

でも俺は、その写真をずっと握ってた。

午前2時の馬鹿騒ぎの中で、俺たちは“誰かの記憶”に触れていた。

それが、俺の夢を揺らしていた“何か”の正体だった。

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