第21話 貴司の仕事探し奮闘記

ある日の夕暮れ、貴司は意を決して町の商店街へ足を踏み入れた。


「さて……俺もなんとかここでレベル上げしないとな……」

と独り言ち、視線を泳がせる。


魚屋の前では威勢のいいおばちゃんが大声で呼び込み。

「お兄ちゃん、手伝ってくんねぇか?今日は忙しくてさあ!」

「あ、あの……ちょっと考えさせてくださいっす!……魚さばくとか絶対ミスりそうっす……“デッドエンド”になりそうで……」

貴司は焦りつつもすぐに次の場所へ。


八百屋の店先には並べられた新鮮な野菜。

「いや、これ包丁もないし、難易度高すぎるっす……」

貴司は思わずゲーマーのセリフが出る。

「しかも虫とか怖いっすよ!」


酒屋の店先には若い旦那衆が。

「兄ちゃん、酒の配達どうだ?重いけどな」

「重量オーバーでスタミナゼロになる予感が……」


市場をうろうろするうち、声をかけてきた町娘たち。

「兄さん、新入りさん?お仕事探してるの?」

「はいっす、何か簡単にできる仕事とかありませんかね?」

「ふふ、うちの河田先生なら、ちょっとした手伝いあるかもよ?」


早速河田先生の元へ向かう貴司。

「おお、祭り以来久しぶりだな貴司殿。細かいことが好きなら帳簿の整理とかどうだ?」


「帳簿!俺の得意な“レアアイテム管理”じゃないっすか!」


貴司の目が輝く。


河田先生は優しく微笑みながら言った。


「じゃあ、帳簿整理の他にも町の健康記録の手伝いも頼もう」

「おお、まさかの“サポート職”発見!しかも人命関わってるとかハードモードっすね!」


河田先生は


「細かい仕事だが、人の命に関わることだからな。真面目に頼むぞ」

「任せてください!クエスト受注っすね!」


貴司は、すかさず身振り手振りで説明を始める。


「まあ、リアルで言えば、患者さんの健康状態をモニターして、問題を見つける『クエスト』って感じっす。体調崩した人は『バッドステータス』で、そこを治すのが先生の役割で、俺はその手助け係。数字の管理や薬の準備とか、かなり得意っすよ!」


先生は穏やかに笑い、


「ほう、それは頼もしいのう。わしは町の医者じゃが、患者の治療はもちろん、予防も大事にしておる。貴司殿が力を貸してくれるなら、心強いわい。」


「じゃあ、今日からわしの助手として手伝ってもらおうかの。まずは簡単な薬の調合から始めるといい。」


貴司は意気揚々と、


「了解っす!ボス戦ならぬ助手戦、全力で挑みますよ!」


こうして貴司の江戸での新たな仕事と挑戦が始まったのだった。

 

夜の長屋。薄暗い灯りの下、博志は粗末な板の間に腰を下ろし、ふぅと息をついた。隣で、貴司が興奮気味に話しかけてくる。


「博志さん!今日、河田先生の助手って話、ほぼ確定っすよ!マジでレアジョブゲットって感じです!」


博志は頭を掻きながら、疲れた声で答える。


「おお、それはよかったな。ま、まずは足場固めだ。お前が江戸でやれること、少しずつ増やしてくしかねぇ。」


貴司は目をキラキラさせながら、


「いやー、医者の助手って響きだけでレベル高いっすよ。手伝いながらヒーリング覚えたいっすね。つか、いきなりレイドボス倒したみたいな気分っすよ!」


博志は苦笑いしつつ、


「レイドボスはお前の上司の河田先生ってことだな。しっかり付いていけよ。」


貴司は自信満々に、


「任せてくださいっす!でも、町の健康守るとか、結構ガチなクエストですよね……まあ、こっちの方がリアルでスリリングかもっす。」


博志は少し呆れながらも、


「リアルはゲームとちゃう。失敗したら容赦ねぇぞ。だが、まずはお前がしっかり動いてくれりゃ、俺も心強ぇ。」


貴司は笑いながら、


「はいはい、兄貴の頼もしい盾、頑張りますっすよ!」


二人の笑い声が長屋の夜に響いた。

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