第13話 聞き込み調査開始

翌朝、町はいつもより早く目覚めた。

長屋の軒先からは、ざわつく声が聞こえる。井戸の周りに人々が集まり、顔をしかめていた。


「こりゃ一体、どうなっとるんだ?」と、年配の町人が手桶を掲げて言う。

「昨日までは澄んだ水だったのに、今朝は真っ黒に濁っておる。しかも臭いが……まるで腐ったような匂いじゃ」


「もしかして、誰かが灰でも捨てたんじゃねえか?」と、若い男が声を荒げる。


町の掃除当番である者たちは顔を合わせ、不安と苛立ちを隠せなかった。


「このままだと、飯も炊けねえし、洗濯もできねえ。何よりも飲み水が……」と老婆が嘆いた。


そんな中、博志と貴司も井戸のそばに駆けつけていた。


「やっぱり、ただ事じゃねえな」博志は眉をひそめ、井戸の水面を覗き込んだ。


「水の色、明らかに黒ずんでる。炭か灰でも流れ込んだんじゃねえか?」


貴司は手をポケットに突っ込みながら、ゲームで覚えた知識を思い出したかのように口を開く。


「ゲームじゃさ、水質悪化したらまず排水溝を掘り返して流れをよくするってのが基本なんすけど……」


「そりゃそうだろうが、そんなことくらい知っとるわい!」と、近くにいた町人がすかさずツッコミを入れた。


二人は苦笑いしながらも、何か役に立てそうだと少しだけ自信を持った。


「まずは原因をはっきりさせなきゃいけねえ。誰かが不用意に灰を捨てた可能性もある。町内で話を聞いて回るしかないな」


「了解っす。動きましょう!」貴司はいつもの軽いノリで応えた。


こうして、二人は町の人々の信頼を少しずつ勝ち取りながら、井戸の異変の解決に乗り出していった。


翌日、博志と貴司は町の住人たちに、井戸の異変について聞き込みを始めた。

長屋の軒先には、畳屋の親父や八百屋の若旦那、掃除当番の老婆たちが集まり、それぞれが口々に話している。


「最近な、矢口清次って男の態度がおかしくてな」

「酒の匂いをぷんぷんさせて、夜中に騒ぎ出すことが多いって話だ」

「そいつが井戸のことに関わってるって噂も流れておる」


博志は眉をひそめた。

「清次……前から何かと問題を起こしてるって聞いたことがある」


貴司も少し不安げに頷く。

「俺たちみたいな新参者には、なかなか情報が集まらないっすね」


町の中には、疑心暗鬼が広がっていた。

人々の視線は次第に清次へと向かい、風当たりは日に日に強くなっていく。



ある夕暮れ、博志と貴司は長屋に住む年配の女性に話を聞くことができた。


「矢口清次はな、昔なあ、茂吉さんと大きな口論をしたことがあるんじゃよ」


女性は物憂げな顔で、ゆっくりと語り始めた。


「ある晩のことじゃ。清次は酒に酔っておってな、茂吉さんの店先に置いてあった道具箱を倒して壊してしまったんじゃ」

「茂吉さんは怒り心頭で、『お前はもっと真面目に働け!』と叱りつけたんじゃよ」

「それに対して清次は、『お前に俺の苦労が分かるか!』と怒鳴り返してしもうてな」


「それからというもの、清次は長屋の中で孤立しちまった。茂吉さんも表向きは厳しい態度を崩さんが、内心は複雑だったそうじゃ」


博志は静かに頷きながら言った。

「深い確執があるんですね……」


貴司も言葉少なに頷いた。

「俺たち、今はまだ何もできないっすけど、少しでも役に立てるように頑張りましょう」


博志と貴司は清次の元へ。

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