第3話

凪君と付き合って半年が経った。


彼は本当に心が綺麗で、あの姉と血を分けた弟とは思えないほどだった。


一緒にいるうちにどんどん深い傷が癒えていくようだった。


この人を傷つけることになっていいのだろうか?という疑問まで生まれ始めた。


「ありえないね」



一人暮らしの私の家で、2人でテレビを観ている時に凪君がそう言った。


「何が?」


と私は聞いた。



「詐欺師がだよ!こんな純粋なお年寄りを騙すなんてあり得ない!可哀想だよ!」


と凪君は怒り出した。


「そう?騙されるバカが悪いんじゃない?」


と私は返した。

あ、しまった。


凪君の前では優しくてピュアな年上の女性を演じてたのに、口が滑ってしまった。


「美奈子ちゃん、本気で言ってるの?冗談だよね?確かに騙されないように知識を得たり、気をつける必要はあるよ?でも、騙す人が悪いに決まってるじゃんか!!騙される人は何も悪くないよ!」


でたよ。

正義のヒーローが。

私がイジメられたときも、あなたのような人がクラスにいたら良かったのにね。


「だったらいじめはどう思う?いじめる人が悪いの?いじめられる人にも原因があるなんて言っている人がいたよ」


私の担任がそう言って、助けてくれなかったよ。



「何言ってるの!?いじめはいじめる側が100%悪いんだよ!何があってもそれは″いじめていい原因″にはならないんだよ!」


ダンッと握り拳で机を叩いて凪君は熱く語った。


ああ、もうダメだ。

泣かないように唇を噛んだけど、耐えれなかった。

私の心に響いてしまった。

あの時の私に、そう言ってほしかった。

その言葉がほしかった。


「あっあっ…ごめんっ!ごめんね?怖かった?怒ってごめんね!」


優しい凪君がハンカチを差し出して私の背中をさすってくれた。


本当だよ。あなたが悪い。

誤算だった。


あの女の弟だから、きっと裏があると思った。

腹黒だったり、偽善者だろうから騙してもいいと思った。


だけど本当に良い人だった。

何度も試してみたけど悪いところなんて1㍉もなかった。


だから別れようと決意した。

私はこの人と付き合っていい人間ではない。

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