第4話
復讐決行予定日、私は公園のベンチで凪君に別れを告げた。
あの女を精神的に苦しめてから、物理的に消そうと思ったのに失敗した。
私にこれ以上この人を傷つけることは出来なかった。
「私は凪君のことを好きじゃないの。
凪君の姉が憎くて近付いたの。
昔すごくいじめられてね。
凪君のことを″たった1人の大切な家族で、かけがえのない存在″だとかInstagramに書いてたのをみてね、凪君を奪って傷つけてやろうと思ったの。
だけど凪君があまりにも優しいから、罪悪感で苦しくなった。
だからもう別れてください。ごめんなさい。」
凪君は息を止めて傷ついた顔で私を見た。
綺麗な目から綺麗な涙が止めどなく溢れた。
「俺を…好きじゃないの?」
「うん。全く。これっぽっちも」
「お姉ちゃんが、美奈子ちゃんをいじめたの?」
「うん、まあ″美奈子″は偽名だけどね。家に卒アルがあったら見てみて。本名は桜田愛美(さくらだまなみ)だよ。あと整形だから、この顔も嘘ね。めっちゃいじめられたよ。信じれないならこれ見て?」
私はスッと黒白の写真をカバンから出すと凪君に見せた。
「この裸の女が私ね。トイレに入ったら3人組に抑えられて、裸にされてこの写真撮られたの。ほら、体を抑えてる手が4本あるでしょう?笑いながら写真を撮ったのは凪君の姉ね。」
凪君は目を大きく開いて顔を青くした。
「この頃チェキっていう、その場で現像できるカメラが流行ってね。撮られた後、好きだった男の子の机の中に入れられちゃった。ほら、クラスに1人は誰にでも優しい人っているでしょう?私なんかが好きになるなんておこがましいほど、カッコよくて優しい男の子がいたの。いじめられてもその子の存在だけが救いだったのにね。その子も写真を見たら口を手で抑えてどっかに走って行ったよ。私の気持ち悪い体見て、吐いたんじゃないかな?」
「ち…ちがうよ…」
凪君は震える唇で否定した。
「違う?何が?優しいお姉ちゃんがそんなことするなんて信じられない?日記見る?」
私はボロボロになった分厚い日記をカバンから取り出した。
でも凪君は日記を受けとらずに私の手首を掴んで言った。
「その男の人は、美奈子ちゃんの体を見て吐き気を起こしたんじゃないよ…いじめられてる姿を見て、こんなことをする汚い人間がいるなんて信じられなくて、美奈子ちゃんがかわいそうで心が耐えれなくなって吐きそうになったんだよきっと…」
あー、そう考えるかぁ。
優しい人の価値観って本当わからないなあ。
私もきっと、あの女側の人間なんだろうなあ。
凪君のように、無垢で真っ直ぐな考え方をもてない。
「お姉ちゃんが…そこまで傷つけてたなんて…ごめんなさい…」
騙してきた私を責めるでもなく、謝るんだもんなあ。すごいよ。
「痛かったよね…つらかったよね…」
手首からスライドして、私の手をギュッと握ってくれた凪君の両手は暖かかった。
私のほんの少しあった良心とやらが軋むほどに。
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