青き薔薇新月団の烙印症

月岡烏情

青き薔薇新月団の烙印症

サキソフォンの冷たき肌に花の触れはろばろと腐らかせば翠


棄てたればゆゑに亦た視る夢の夜の明くればなほも同じきあした


青き花の寝台ねだいに鳥はひとときを憩ふ人にしみぢかき生の


うすく笑ふ愛玩少年その口にひとつ残らず歯は抜かれたり


夜もまた骨を持つなるうつすらとあばらおなじき弧をくりかへす


屍に薔薇の痣咲く死の病そのみづからを懸想おもひて眠る


母の掌に死にし凍蝶しづやかに月が陽の反照を注ぎき


砂に沈みゆくキャラックの帆柱がまたひとつ折れたるの響き


とほくとほくあなたへ雨のおと聴かすための仲間はづれの渡り鳥


ひえびえと真夜にキリンの背は割れて羽化かなしかる少年の肌

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青き薔薇新月団の烙印症 月岡烏情 @ujou31

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