第2話 コウちゃん
「コウちゃん」
その名前を、今、誰かが呼ぶことはもうない。
でも、あの頃――
リクも、ミナミも、毎日のようにそう呼んでいた。
「コウちゃん、ごはんできたよ」
「コウちゃん、パスして!」
テレビの前で3人で食べたカレー。
サッカーの試合のあとに買って帰ったアイス。
夜、YouTubeを観ながら眠りに落ちたリクの寝顔を、
ミナミと見つめて、笑い合った夜。
すべてが「コウちゃん」という名前の中に詰まっている。
あの名前は、俺が“ただの自分”じゃなくなれた証だった。
誰かにとって、必要とされる存在になれた名前。
でも今は、
もう誰もそう呼ばない。
リクは新しい家庭の中で、きっと違う呼び方で大人たちと接しているだろう。
ミナミも、今は別の名前を呼んで笑っているだろう。
それでも――
リクがもし、ふとした瞬間にでも、あの名前を心の中でつぶやくことがあったら。
「あのときのコウちゃん、元気かな」
たったそれだけでいい。
俺はきっと、
もう一度だけ、あの温かい世界に触れられた気がするんだ。
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