T・A=アーノルド?リヴァプールはそうじゃない
トレント・アレクサンダー・アーノルドの魅力はキックだ。デヴィッド・ベッカムと比較しても劣らない美しい弾道で高精度なロングキックがアーノルドをアーノルドたらしめている。
多くの人がもう忘れているのが、アーノルドの守備は決して褒められるレベルのものではないこと。
現にレアル・マドリードでも守備力は、不安視されている。ダニエル・カルバハルには遠く及ばない。
そんなアーノルドの退団がリヴァプールの守備を弱体化させたそうだ。
なんで?
リヴァプールFCが勝てなくなって暫く経つが、攻撃も守備もチグハグでベストの布陣を見出せていないように感じる。
アーノルド退団の影響も確かにあるが、それは個人の守備力ではなくてチーム全体のメカニズムの話だ。
アーノルドは攻撃時に中盤に上がる偽SBだった、主にMFをやりたいというアーノルドの我儘な理由のせいで。
それでアンドリュー・ロバートソンがDFラインに残り3−2−2−3を形成していた。
これが今のチームになると右ジェレミー・フリンポン左ミロシュ・ケルケズ、どちらも偽SBではないく、3バックができる程の守備力もない。
なので偽SBをやっても上手くはいかない。
だから、フリンポンをWGにしてソボスライ・ドミニクをSBにするというのは理解出来る。
ただ問題はソボスライがSBの守備に不慣れだったことだ。
中盤からSBに移ってまず困るのがドリブル対応。
スピードに乗った相手を止めるのはただでさえ難しいのに、経験値の少ないソボスライにとっては尚更で、相手WGに抜かれるのは仕方ない。
中を切って縦突破に誘導しただけでも仕事をしている。
より困難なのは、中央か左にボールがある時の相手のマークだ。
同一視野にボールとマークする相手を入れられないため、ボールウォッチャーになりやすい。
対して大外にいる相手WGは、同一視野にボールも相手DFラインも入るためかなり自由にプレー出来る。
本職SBでもこの状況でしっかりとした守備が出来る選手の方が少ないので、ソボスライが出来ないのも当然だ。
この状況ではCBの様な身体の向きや対応が求められるのだから。
なのでマンチェスター・シティは右SBにリコ・ルイスではなく、アブドゥコディル・クサノフを使っている。
かつて冨安健洋がアーセナルの右サイドの守備を改善したように、CBが出来る選手を起用しなければ個人レベルでの解決は出来ない。
さらに逆サイドのSBにも相応の守備力が必要で、ラインコントロールやカウンターケアや競り合いや広いスペースのカバー等ケルケズには荷が重い。
アーノルドの退団よりロバートソンの衰えの方がリヴァプールにとっては痛手なのではないかとさえ思える。
よって現在のリヴァプールでは偽SBというのは、
守備面に不安が大きい。
SBをDFラインに残さない可変の仕方もあるが、そんな複雑な動きを今のリヴァプールが熟せるとも思えない。
この部分の改善には選手個人の成長を待つしかないので、時間がかかると思われる。
守備の弱体化の原因はまだあって、こちらの方が本質的な問題だ。
昨期のリヴァプールは、ユルゲン・クロップのチームをアルネ・スロットがチューンアップしたものだった。
しかし今年のチームは完全にスロットの指向のものだ。
2人の監督の個性の違いが、守備力にも反映されている。
クロップは、チームにスタミナと身体能力と走力と献身性の高さを求めた。
それでゲーゲンプレスを可能にしたが、プレミアリーグの激しさの中では試合終了までスタミナが持たず、仕方なくボールを持ち始めた。
また守備もゲーゲンプレスだけでは充分ではなかったが、フィルジル・ファン・ダイクとアリソン・ベッカーの個の力を加えたことでやっと安定した。
スロットはクロップの奪い奪われの切り替えの激しいプレーではなく、ボールを奪われずに繋ぎきるプレーをしようとしている。
クロップは失敗を考慮に入れているが、スロットは成功を前提としている。
なのでリスク管理に差があるが、これは個性の範疇でスロットがより攻撃的なチームを作ろうとしているためだ。
大雑把に言えば、失点を上回る得点が出来なかったことが失敗だ。
それが上手くいってないチグハグさは、新加入選手の多さがある。
普通は新監督就任の時点で大型補強をするが、リヴァプールは2年目の今夏大型補強をした。
新加入選手はチームに馴染むだけでなく、新戦術にも対応しなければならない。
教えられて直ぐ出来る事もあれば、切り替えが遅くなったり判断がブレる場合もある。
新加入選手が迷いなくのびのびプレーするのは、難しい。
要するに新監督就任の余波が1年遅れでやって来たということだ。
なので今シーズンのリヴァプールは、冬までにチームを安定させられれば良いのではないか。
ファンには昨シーズンの優勝を忘れて、新監督就任だと思って温かく見守ることが求められているのだと思う。
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