第36 サッカー選手には戦術をコピペ出来ない

 今シーズン開幕以来何度もギリギリで勝ちを拾ってきたリヴァプールFCが、とうとう負けだした。


 多くの人にとって原因が、コナテの度重なるミスや両SBの守備やヴィルツの不調と言うだろう。

 確かにコナテのミスは、よく目立つし庇えない。

ヴィルツも数字を残せていない。SBは元々攻撃的な選手を選んでいるのである意味仕方ない。

 新加入選手がプレミアリーグに適応しきっていないのも事実だ。


 しかし選手個人の能力だけが原因と言い切れない部分もある。

 それは遅ればせながら表れたユルゲン・クロップからアルネ・スロットへの監督交代の影響と新加入選手の存在だ。

 普通のチームは監督交代時に、新監督の要望に応えた選手獲得を行う。

 だがリヴァプールは今シーズンにそれを行った。


 それによりチームには、少なくとも3種類以上の戦術の影響を受けた選手がいることになった。

 クロップの戦術とスロットの戦術と前所属チームの戦術だ。


 昨シーズンは主にクロップの戦術の影響が強く残ったところに、スロットが修正を加えて成功した。

 今シーズンからスロットは自分を色濃く出し始めた。

 新加入選手の選択からもスロットの個性がわかる。

 スロットは攻撃的な思考を持ち、密集でもボールを失わずパスを回せる選手を好む。

 

 クロップの戦術的特徴はゲーゲンプレスで、元は反ポゼッション派だ。

 ボールを繋ぎ始めたのはぶつかり合いが多い上ペースが早く強度が高いプレミアでゲーゲンプレスをし続けると、選手達のスタミナを持たないことが分かってからだ。

 クロップの戦術はまず守備で、そこから攻撃がある。

 それでも実戦で守備が安定したのは、CBのファン・ダイクとGKのアリソンを獲得してからだった。

 過剰なプレスとこの二人が最終防衛ラインとなることでようやく優勝に繋がった。

 

 スロットは、ライアン・フラーフェンベルフやヴィルツやウーゴ・エキティケやイサクやジェレミー・フリンポン等、ボールを持てる選手を数多く登用した。

 これだけで攻撃は強くなるがプレスの過剰さは減り守備は弱くなる。

 そこに戦術の移設が重なる。

 

 まず人間である選手には、プログラムを組み替えれば直ぐに動ける機械の様な器用さはない。

 さらに監督がいくら緻密なプランと戦術を敷いてもそれだけではゲームは成立せず、選手達の現場判断を必要とする。

 判断に基準や指向性を与えるのが戦術という概念とも言える。


 新加入選手達はスロットやリヴァプールの色に染まりきっておらず前所属チームの影響も残るため、判断にブレが出やすい。

 スロットは時間が経てば解決すると思っているだろうが、今はまだダメだ。

 直そうにも過密日程が邪魔をしている。

 

 まとめると、クロップの時はミスがあっても想定内で、それを身体能力やスタミナの高さでカバーをしていたし、終盤でも走り勝てる選手起用をしていた。

 スロットは、上手くいくことを想定したサッカーをしている。

 当然ミスが起きたら、カバー出来ないかし辛い。

ここに判断のブレが加わる。

 そうなると今シーズンのリヴァプールは取りこぼしが増えそうだ。

 アリソンの今回の怪我は軽傷みたいだが、最終防衛ラインであるアリソンやファン・ダイクが欠けるような事があるとチームの守備に大きな穴が空きかねない。


 

 ここで注目は、冬の移籍期間に新たにCBを補強するのかということ。

 欲しがっていたマーク・グエイがレアル・マドリードを希望しているという噂もある。

 選手獲得がし難い冬にCBを手に入れることは出来るのだろうか?

 モハメド・サラーのバックアップもいない事を考えると、あれだけ金を使ってもまだまだ補強は足りてなかったようだ。

 

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