第35話 王様にはすぐなれる?モドリッチとデ・ブライネとコンテの場合
セリエA・ACミラン対SSCナポリ戦2−1でミランが勝利した。
結果論で言う勝因は、GKマイク・メニャンやFWクリスチャン・プリシッチの活躍だろう。
試合内容では、MFのアドリアン・ラビオとルカ・モドリッチとユスフ・フォファナの安定が大きかったと思う。
ラビオを獲得出来たのは、ミランにとってものすごい幸運だった。
ラビオは前所属のオリンピック・マルセイユで良いのか悪いのか良く分からないトラブルを起こしチームを追放されたが、その時に素早く動いた成果が早くも出た。
ラビオは本当に良い選手でピッチ上でもプレーヤーとしての姿勢も文句ないのだが、マルセイユて暴力を振るってしまった事と口を出す母親だけは悪い
最上の訳あり物件だ。
モドリッチは圧巻のプレー内容で、実に丁寧なプレーをしていた。
ビルドアップ時には行き詰まらないようにDFラインに下りたり、アンカーの立ち位置で後ろからフォローしたりし、戦術を超えた動きでチームを支えていた。
ボールが前に進んでもチーム全員がモドリッチを意識していて、なにかとモドリッチにボールが集まっていた。
守備でもタスクをこなした上で危ないところ顔を出す。
もうどう見てもチームの中心、王様のプレーだった。
ナポリのベテランMFケビン・デ・ブライネはフレッシュな選手との入れ替えということで交代させられたが、モドリッチはしっかりと走れていた。
マッシミリアーノ・アッレグリが選手の組み合わせで勝つ監督というのもあっただろうが、このプレーぶりではアッレグリも40歳の選手を交代出来なかったようだ。
ナポリの失敗は、まず試合にふわっと入ってしまった事。
チーム全体が横に間延びしていて圧縮が効いておらずスペースを多く残していたし、選手の帰陣も遅かった。これで1失点。
2失点目は少し奇妙な形だった。
左サイド深くに侵入したミランのストラヒニャ・パヴロヴィッチのドリブルが遅すぎた。
遅すぎたドリブルがタメとなって時間を作り、同時にナポリのディフェンスの隙を作った。
ナポリの選手達はパヴロヴィッチのペースに付き合ってしまったが、ミランの選手達は素早く動いてフォファナ・プリシッチとボールを繋ぎゴールを決めた。
極端に言えばナポリの選手達は、止まった時間の中で失点してしまったようなものだった。
後半にミラン左WBペルビス・エストゥピニャンのエリア内での反則からのPKで1点を返したが、エストゥピニャン退場の数的優位を活かせずこのまま試合は終了した。
注目のデ・ブライネは途中交代となって、怒りを露わにしていたそうだ。
これはデ・ブライネの性格から言って、自分の交代が嫌だというただの我儘ではないと思う。
ナポリの監督アントニオ・コンテの志向するサッカーとデ・ブライネが今までやってきたサッカーの相違が原因だ。
コンテはどちらかと言えばゴール前の攻防を重視した中盤省略形のサッカーだ。
対してデ・ブライネは、VfLヴォルフスブルクでもマンチェスター・シティでも中盤の要として活躍して来た。
コンテとしてはシンプルなクロスボールとミドルシュートの攻撃で良かったが、デ・ブライネから見るとそんな攻撃では点は取れないと思った。
なのでデ・ブライネは、チームの事を考えた故に交代に納得が出来なかったのだろうと思う。
コンテは試合後「彼は間違った相手に絡んでいる」と語ったが、これは巧妙なコメントだった。
コンテは暗に俺は変わらないと伝えた、こう言われたらデ・ブライネはもうコンテに従うしかない。
そして従うだろう。
ところで何故コンテは経営陣にはストレートに辛辣な物言いをするのに、選手にはこんな巧妙な受け答えをするのだろう?
彼にとって選手は味方だが、経営陣は敵に近いのだろうか?
コンテはチーム内での強い権力を要求して采配を振るうが、決して王様ではないのがこの辺から見て取れる。
実務にあたる選手や監督はピッチ上では王様になれるが、チーム内では経営陣には敵わないのが社会の現実だ。
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