第34話 秋の装いとマドリードダービー
週末の試合では、早くもセリエA・コモ1907の監督セスク・ファブレガスとリーグ・アンパリSGの監督ルイス・エンリケがライトダウンを着用していた。
コモはUSクレモネーゼを相手に1−1の引き分け、パリSGはAJオセール相手に2−0で勝利した。
クレモネーゼはレスター・シティFCを退団したジェイミー・ヴァーディを獲得したクラブだ。
昇格組ながら開幕戦でACミランを1−2で敗り、決勝点となったジャンピング・ボレーも話題となった。
もっと話題になったのは、イタリアの独裁者のひ孫のセリエAデビューだった。
監督の指示をしっかり聞いていたそうなので、独裁的な性格ではなさそうだ。
チームは今のところ無敗、開幕戦ではミランより守備が整備されていたくらいなので、コモにとっても楽な相手ではなく拮抗した試合となっていた。
パリSGの試合では、まだ自転車事故の怪我が治ず黒い三角巾で腕を吊ったルイス・エンリケが、前半はスタンドから観戦するアメリカンフットボールのHCのスタイルを継続中だ。
ついでにキックオフ時ボールを自陣に戻さず、敵陣深くのタッチラインに蹴り出すのも継続中だ。
こちらはラグビーのスタイルだ。サッカーと違いラグビーではエリアを取り合う。マイボールでも自陣深くは危険だし、相手ボールでも敵陣深くはチャンスという考えだ。
パリSGの場合は、危険の少ない場所での安定した状況からプレーを始めるという意図だと思う。
試合はターンオーバーを使っても、順当な力勝ちだった。
セスクやルイス・エンリケよりカッコよく決めているのが、アトレティコ・マドリード監督のディエゴ・シメオネだ。
黒いスーツに黒いシャツ黒いネクタイという格好は、まるでダークヒーローの様な佇まいだ。
スペインではリーガ・エスパニョーラを代表する大一番、アトレティコ・マドリード対レアル・マドリードのマドリードダービーが行なわれた。
先制はアトレティコ、セットプレーの流れで右SHジュリアーノ・シメオネのクロスボールをCBロビン・ル・ノルマンが相手DFに乗りかかるようなヘディングで決めた。
対しレアルはスルーパスに抜け出したキリアン・ムバッペがインステップで当てるだけというクールなシュートを決めて同点。
続きヴィニシウスが左サイドのドリブルで右SBのマルコス・ジョレンテとCBのル・ノルマンを2人同時に躱し中央へ折り返すと、CBが釣り出され空いたスペースにフリーでいたアルダ・ギュレルのシュートが決まりレアルが逆転した。
最高だったのはここからだ。前半終了間際アトレティコのCKからの得点がハンドの裁定で取り消しになった。
ボールが手に当たったのは後ろから飛び込んだCBクレマン・ラングレだったのだが、彼はボールに手を当てにいったのではなかった。
横で競り合いをしていたFWアレクサンデル・セルロートが腕を振り回したため、咄嗟に顔を庇おうと腕を上げたら、そこにたまたまボールが来た。
これは不可抗力中の不可抗力だった。サッカーが人生の縮図だというなら、これはいったいどんな縮図なんだろう?とても珍しい瞬間を見た。
そんな不運をものともせずアトレティコは直ぐ同点に追い付く。左サイドの浅い位置から上げられたクロスボールにセルロートが合わせた。
この得点はレアルの左SBアルヴァロ・カレーラスのマークミスが原因。直前までセルロートの背中に手を当てていたのに、そっと手を下ろしフリーにした。
これがレアルファンが褒めあげる攻撃的SBの守備力だ。ダヴィド・アラバとは天と地の差があるのに、レアルファンは迂闊にも彼を称賛している。
後半開始直後のCKでギュレルがニコ・ゴンサレスの顔を蹴りアトレティコがPKを獲得(これはギュレルの経験不足が原因だ)。
FWフリアン・アルバレスが決め逆転。
その後アルバレスがFKで追加点を決め、アディショナルタイムには途中出場のFWアントワーヌ・グリーズマンまで得点を決めた。
結果5−2のスコアでアトレティコが勝利した。勝利監督のシメオネは感情を抑えきれず男泣きをする程だった。というか、アルバレスがFKを決めた時既に顔を覆っていた。
ここに駆け付けたジョレンテはきっといい奴だ。
アトレティコの完勝で終わったマドリードダービーだったが、不運や経験不足や名手の繊細な技術や若手のサボりなど盛り沢山な内容でとても満足した。
開幕からの不安定な戦いでアレコレ言われていたシメオネの立場も、これで暫くは安泰だろう。
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