第33話 ネーデルラントはデュエル三昧

 オランダ・エールディビジで日本代表選手達が、激しいデュエルを繰りひろげた。


 FCフローニンゲン対フェイエノールトの一戦は、上田綺世のゴールによりフェイエノールトが0−1で勝利した。

 そのゴールは右から左へ渡ったボールを相手CBが見ている間の予備動作でマークを外し、ニアサイドへ飛び込みヘディングしたもの。

 ニアサイドへ飛び込みではなく、マークを外した一連の動きこそ上田綺世の真価だ。


 “シュートを打つ前にまずマークを外す”この見逃されがちな動きこそ、超一流のFW達との共通点。

 サッカー史に残るFW達が数多くの、そして華麗なゴールを決めてきたのは大抵フリーでシュートを打っているからだ。


 ポストプレーの場面では相手CBとバチバチの競り合いをしていた。

 先日のAZ戦のような暴力行為ではなく、常識的な範囲での汚いプレーを含めた非常に激しい一対一を繰り返していた。

 

 この激しいプレーこそ、上田綺世が必要としている成長への負荷だろう。

 容易く負けるようではこの先には行けないと、分かっているだろう。


 CBの渡辺剛はこの試合の相棒マルコム・エングが自由人と化していたため少し苦労しただろうが、大方安定したプレーをしていた。

 素晴らしいと思ったプレーは、ボックス内のドリブルをする相手との一対一においてスライディングでシュートとドリブルのコースを消し相手をゴールライン際に追い詰めプレーの選択肢を奪ったもの。


 渡辺剛はデュエルもマークもカバーも安定していて、見ていて全く危なげがなかった。とてもよろし。



 アヤックス対NACブレダ戦は2−1でアヤックスが勝利した。


 しかし板倉滉は苦労していた。とにかく相手FWシドニー・ファン・ホーイドンクが高く強い日本やアジアではまず相対しない超大型のCFだったためだ。

 

 後ろから押してもびくともしないし、高さでは敵わない。そんな相手に板倉滉はファウルを交え奮闘した。それでも結果はあまり芳しくなかった。


 でもこれが欧州で戦うということで、板倉滉に必要な負荷だ。



 NECナイメンヘン対AZアルクマール戦には小川航基と佐野航大が出場、2−1でNECが勝利した(AZの毎熊晟矢はヒザの故障で不出場)。


 この試合のNECはチグハグだった。佐野航大をアンカーに置いた前節の敗戦と10番のチャロン・チェリーの出場停止により、システム変更したせいかもしれない。


 小川航基は頑張りが空回りしていた。プレーし辛そうで、シュートチャンスを2回外していた。

 

 佐野航大はドタバタ動くチームを正常化させようと幅広く動いていたが、あまり効果はなかった。

 攻守共に多くのデュエルに勝利しパスを捌いたが、周りの選手達が思うように動かなかった。

 勝ったから良いようなものの、徒労感の残る孤軍奮闘といった感じだった。



 ちなみに、前節のSCヘーレンフェーン戦では敗戦の中小川航基がゴールを決めている。

 でも日本人選手の活躍がどうでもよくなるくらい、ヘーレンフェーンのとある選手が大活躍した。


 10番を背負うMFリンゴ・メールフェルトという選手でゴールを決めただけでなく、バイタルエリアの密集の中でドリブルからのマルセイユ・ルーレット、そしてラストパスという超絶プレーを見せた。


 この選手は無名だが、古典的10番の技術とセンスと視野の広さを持っているスモールクラブのビッグプレーヤーだ。

 でもスカウト網にかからないのはスピードがあまりないからだろうか、それ以外の資質は充分だが。


 ビッグクラブでは辛いかもしれないが、それ以外のクラブでは凄く役に立つ。

 こんな選手が日本人選手の側にいてくれたら、と思う。 

 でも今や日本人選手が彼の様に活躍することを期待されているのかも知れない。

 

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