第17話 サイクルと中庸と着地出来ない進歩
クライフ信者にはお馴染みのヨハン・クライフの語録の1つ、『チームにはサイクルがある』。
ここでのチームとはチーム名ではなく、選手・監督・プレースタイルなどを含んだ群像やイメージだ。
今、1つのサイクルを終えようとしているのがノッティンガム・フォレスト。理由はヌーノ・エスピリト・サント監督の解任。前々からオーナーと揉めていた話があったが、とうとうだ。
ヌーノに率いられたチームの印象は古臭く中庸だったが、破壊力があった。昨シーズン7位で、しかも上位陣との対決でも存分に渡り合った。
古臭く感じるのはプレースタイルのせいで、堅守速攻のカウンター型のチームだ。
カウンターといっても最近のチームはハイプレス+ショートカウンターなのに対し、フォレストはセットバック+ロングカウンター。チーム全体の走行距離も長くなく、一昔前のスタイルだ。
引き下がる守備は安定感を与えると共に運動量を抑え、残した体力で鋭いカウンターを仕掛けた。
でもそのスタイルでプレミアリーグを席巻した。
ジョゼップ・グアルディオラやアルネ・スロットやミケル・アルテタらが先鋭的な戦いを繰り広げる中でも十分に通用した。
選手個々で目立っていたのは、エリオット・アンダーソンとモーガン・ギブス=ホワイトとクリス・ウッド。
アンダーソンはまだ若いが攻守共にハイレベル。
デュエルに強くパスも出せる。
ギブス=ホワイトは仕掛け役で、アシスト能力が高い。守備でも走り回る。
ウッドは191cmの身長を活かしたヘディングやポストプレーが得意な仕留め役。
特にウッドの競り負けない体躯を活かしたプレーは本当に一昔前の古き良きプレミアリーグを彷彿とさせた。それだけでなく、得点も量産した。
このチームがもうじき終わる。先鋭化するプレミアリーグの中に突如現れた前時代的なチームが。
教訓は、進化・進歩するだけが正解じゃないってところだろうか。
チームにマイナーチェンジを重ねてサイクルを少しでも長続きさせようとしているのは、グアルディオラだ。
今夏インテル・ミラノへと移籍したCBマヌエル・アカンジは、グアルディオラにこう言われたそうだ。CBが6人いる中で
『2人が出場し、2人がベンチに座る。残りの選手は厳しい状況になる』と。
普通の発言に聞こえるが、そこはペップ率いるマンチェスター・シティだ。だから言いたくなる。
「4CBもう止めたの?」と。
シティは自由人SBジョアン・カンセロとの騒動と顛末や期待して獲得した選手達の不発などから来るの守備の不安解消のため、結果的にCBを4枚並べるに至った。そして悲願のCL優勝もした。
でも止めるらしい、新戦力のライアン・アイト=ヌーリも攻撃的なSBだ。
そして今、故障者が出てCBが足りないとかなっている。なんなんだろう?
戦術実験を繰り返さないと、死んでしまうのだろうか?
理想と現実の狭間で揺らぐことは、逃れられないカルマなのだろうか?
ペップがハードワークしていることも、心労が多いことも簡単に見て取れる。
スカッドの人数を多いと言ったり少ないと言ったりするのも、どちらにしても問題があるからだ。
人数が多いと試合に出れない選手が多くなり、不満を抱える選手も多くなる。
人数が少ないと故障者が出た時に対応出来ない。選手夫々キャリアや性格も違うので、理想的な布陣などそう見つからないのだ。常に苦労する。
ユルゲン・クロップに続きペップも限界が近いようで、今契約終了をもって無期限の休養に入ると宣言した。
そこで初めて監督の疲弊もチームのサイクル終焉の要因になるのだと気付いた。
何年か前の優勝決定後の騒ぎの中、周囲の人と肩を組みOASISの「Don't look back in anger」を歌うペップからは、発散しながらも配慮が行き届いているという抑制の効いた喜びの感情が感じられた。
こんな時でも頭をカラッポには出来ないんだなと思った。
この曲が発売された時、ペップはまだバルセロナにいたはず。マンチェスターに来てから覚えたんだろうな。
ユルゲン・クロップの時にはこんな事を考えなかったのは、思い入れの違いだろうか?
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