第5話田中碧の奮闘と労働者と遠藤航

 PL第一節リーズ・ユナイテッド対エヴァートン戦にて田中碧が出場し、高評価を得た。


 いつも通りの安定したビルドアップ・的確なゲームコントロールと体を張った守備。

 特に称賛を得たのは終盤に見せた、二度追いからのスライディングだ。

 このプレーの評価は日本より現地の方が高かったのではないだろうか?

 と、思ってしまうのは遠藤航の高評価があるからだ。


 遠藤航がリヴァプールファンの中でカルト的な人気を誇る、と記事で読んだ。他にも昔から泥臭くプレーする選手が好かれるとも。

 しかし知識としては入ってきたけど、理解は出来ていなかった。


 労働者・労働者階級というのは、本当の意味での理解がし辛い。

 労働者階級出身者が金持ちに成るには、サッカー選手かロックスターに成るしかない。

 と、誰か有名人が言っていた(ジョン・ライドンだったかモリッシーだったか)。

 まるでローリング・ストーンズのストリート・ファイティング・マンの歌詞みたいな言い方だ。



 Well, what can a poor boy do


 じゃあ金の無い若い男に


 Except to sing for a rock n roll band


 ロックバンドで歌う以外に何が出来る?


 cause in sleepy london town


 退屈なロンドンの街では


 Theres no place for a street fighting man


 ストリート・ファイティング・マンには、居場所   が無いんだ


 

 カッコいい、でもなんか色々考えさせられるぞ、労働者階級。

 


 サッカーの世界では、一般的に首都のチームよりも工業都市のチームの方が強いと言う説がある。


 首都では、お金持ちはサッカーに興味を示さないので(昔のパリ・サンジェルマンやASモナコの様に)、スタンドには空席が目立つ。

 方や工業都市では労働者のファンでスタンドが溢れかえり、熱狂的な応援するからだ。

 

 その例の1つがマンチェスターだ。そしてリヴァプールはマンチェスターの下流に位置し、マンチェスター為に荷下ろしをしていた街。

 それだけでファンの熱量がわかる。

 

 そのファンに好かれる遠藤航、普通に考えても素晴らしいプレーヤーだし好かれるのは当然だ。


 でもそれだけではないと思う。


 リヴァプールファンの方に遠藤航に深く共感出来る素養があるのだと思う。


 ・加入当初のほぼ無名の立場から懸命に努力し、周囲に認められポジションを掴んだ姿


 ・進んで汗をかき体を張り泥臭く守備をする姿


 ・ポジションを奪われ不遇な立場になっても不平を言わず努力をし続ける姿


 ・限られた出場機会でもチームに貢献しようと全力でプレーする姿


 それらがリヴァプールファンの心の琴線に触れたのだと思う。

 これぞ自分達が心から認め、また誇りに思う選手の姿だと。


 試合途中に遠藤航がプレーしていなくても歌われるチャント。

 その意味の半分は遠藤航を早く出せというプレッシャーだろう。 

 そしてもう半分は、俺達のチームには遠藤航がいるぞという意味での『喜びの歌』なのだと思う。

 

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