第4話昨今の移籍市場ってどうよ

あいも変わらず、マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーの移籍動向・選手獲得は狂っている。


 もうサッカー界全体として青田買いは止めるというか、あまりプラスにはならないと気付くべきではないだろうか。そう思わせるまでユナイテッドとチェルシーは酷い。

 

 ユナイテッドの問題。


ユナイテッドの関係者やファンが聞いたら怒るだろうが、今のユナイテッドのチーム運営は劣化版レアル・マドリードのようだ。というか、元々似ている。


 レアルとユナイテッドは、個人能力の集合体だ。


 各個人・スペシャリスト達が各々の仕事を熟せば、チームは上手くいく。

 チームがどの様にプレーするかは、選手達の個性次第だ。

 先に形があるのではなく、選手の能力を十全に発揮出来るようなチーム構成にする。それが現場スタッフの仕事だ。

 そんなやり方だから、上手くいかない時もある。

 期待を込めて獲得した選手が活躍出来なかったり、酷いときは守備が弱点のチームに、余分なFWを招き入れたりするからだ。

 今のユナイテッドがそんな感じだ。

 

 でもそれ予見出来なかったの?


 ユナイテッドの選手育成は上手い、なんてのは嘘で自惚れだ。

 アレックス・ファーガソン時代のファーギーズ・フレッジリングスやウェイン・ルーニーやクリスチアーノ・ロナウド達の成功や獲得時他のビッグクラブに注目されていなかったブルーノ・フェルナンデスの活躍等で目が曇った。

 ファーガソン時代の若手はエリック・カントナの好影響やファーガソンのマネージメント力があってのことだし、フェルナンデスは既に成熟していた。 

 ファーガソン時代のカルロス・テベスの様に、マイケル・キャリックの様に。


 最近獲得した若手選手が思うように、活躍出来ていないのは、当たり前だ。

 移籍して即結果が求められ、勝ち点や順位を落とすと批判される。

 チームが上手く機能してないのにも関わらずだ。     

 タスクもプレッシャーも大き過ぎる。


 この様な環境は若手選手には最適とは言えず、むしろ最悪に近い。


 ラスムス・ホイルンドが最も悲惨な例だろう。


 アーリング・ハーランドに似たスペックを持っていたが、その時点での能力は比べるべくもなかった。

 ボルシア・ドルトムントでほぼ1試合に1点という得点数を残したハーランドに比べ、ホイルンドはアタランタで32試合9得点。

 リーグの違いはあれど、得点王とたまに点を取る若手選手だ。明らかに成熟度が違う。

 更に言えば完成度の高いチームに入ったハーランドと完成度の低いチームに入ったホイルンド。

 それでもホイルンドはハーランドのライバルとなる活躍を期待されたのだ。

 そしてホイルンドが上手くいってないと思ったユナイテッドは、ジョシュア・ザークツィーを獲得した。ザークツィーもまた然り。



 ファーガソンのライバルだったアーセン・ベンゲルは、選手育成の苦労を知っていた。


 サッカー史に残る傑作FWティエリ・アンリを生み出し、他にも安価で獲得した若手選手を多数育て上げた実績で、選手育成の名人とも言われるベンゲルでも失敗は数多いし、「育成の代償は勝ち点だ」とも言っていた。


 つまり、リスクが高い。


 選手育成は上手くいけば経済的にかなり得だし、ファンからの人気や支持も高くなるだろうが、総大で見ればやはり失敗の数の方が多い。


 チームとしての戦い方もファーガソンとベンゲルは違っていた。


 ファーガソンは選手に厳しく接し、勝利の為に全力を尽くことを強く求めた。

 当たり前のように聞こえるが、その要求の強さが群を抜いていた(戦術はコーチに任せていたらしいが)。

 全体的に言うと選手各々の得意なプレーを活かすと言うか、選手各々が自分の得意なプレーを決め打ち的にしようとしていた。

 必殺技を繰り出そうとするかの様に。


 ベンゲルは選手に協調と連携を求めた。


 シーズン中の練習も、タッチ数を限定したミニゲームが多かったらしい、つまりパスゲームの練習だ。

 ベンゲルのルールはお互いに協力し合うことでお互いを活かし合う、というものだ。

 チーム戦術の決め事は多すぎす、選手にある程度の自由を与え、選手個々に判断に任せた。


 若手選手はトライアンドエラーを繰り返し、時に成功し時に失敗した。

 そしてチームは勝ち点を積上げたり、取りこぼしたりしていた。


 ベンゲルはしょっちゅう選手育成の代償を支払っていた。

 アーセナルは長期に渡ってこれを許していたが、ユナイテッドがそうなったことはない(グレイザー家以外には)。


 ならば何故、選手を買ってまで育成などするのだろうか?

 育成はアカデミーの有望株だけで充分なのではないか。

 リスクを許容しないのなら、手を出すべきではない。

 

 ユナイテッドは未熟な若手ではなく、成熟した完成度の高い選手を買うべきだ。

 プライドの高いビッグクラブらしくビッグディールを。

 グレイザーの予算編成に文句を言うのも判るが、その使い方も褒められたものではなかったのだ。




 チェルシーは資金力に飽かせて、数撃ちゃ当たる的な馬鹿なギャンブルを繰り返している。

 

 各地で芽が出た若手有望株を早期に多数獲得した後、一様にレンタル移籍させること2・3年。

 大した成果を挙げられなかった選手や引き手のあった選手はチームを出されたり売られたりする。その繰り返し。


 マンチェスター・シティーも同じことをしているが、チェルシーの頻度はかなり高い。シティーよりも管理がされていない様見受けられる。


 一線級になることを期待された選手も、レンタル移籍の後は名を聞かなくなるばっかりだ。


 なら、何故獲得するのだろうか?他のチームに獲られる前に獲る、獲られない様に競争してでも獲ってるとしか見えない。

 大抵の選手は成功してないのに。


 だとしたら、有望な若手選手はある程度放おって置いたほうがサッカー界の為なのではないか。


 成長過程の早すぎる段階で今居るチームから引き抜くよりも、成長段階に合わせて自然な形でチームを変えさせるべきだ。


 各チームがアカデミーで当たり前にやっていることを、移籍した選手はやってもらえない(獲得したチームはやっているつもりだろうが)。


 急成長は無理にやらせて出来るものではないのだから。


 各チームは選手を三段跳びで獲得するのではなく、下部リーグの優良選手を上部リーグの中位下位チームが、中位下位チームの優良選手を上位チームが獲得すろのが自然なはずだ。


 その方が、全体として選手レベルが上がるのではないだろうか?とまで思ってしまう。

 ビッグクラブが絡んだ失敗例が多すぎる様に感じてしまうのだ。


 この意見が資本主義的でないのは分かっているのだが、チェルシーの移籍市場を荒らしすぎだ。

 若手選手の転売で資金繰りって、倫理的にどうなのよ?って思う。

 

 正し育成が出来ないのなら、選手が自力で目立つ様になってから、若手選手何人分かの資金で買えば良いのだ。

 それだと選手が買えないと言うのなら、より大金を出すべきだ。


 かつてのチェルシーの様に。

 

 

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