依頼①『追ってくる手帳』
調査依頼①『追ってくる手帳』
※上記の名前は便宜上付けた仮の名称である。
・概要
外見はごく一般的な手帳そのもの。表紙は赤色で、文字や絵といったものは描かれていない。中身も白紙。
存在が確認されたのはおよそ二か月前。インターネットのスレッドにこの手帳を拾った人物が書き込みを行ったことがきっかけ。
以下はそのスレッドの書き込みを抜粋したものである。
1名無しのオカルトマニア(主)
すまん、助けてくれ
気持ちの悪いものを拾ってしまった。明らかに普通じゃない
2名無しのオカルトマニア
>1どうした? 何を拾った?
3名無しのオカルトマニア
>1グロ系統は勘弁な!
4名無しのオカルトマニア(主)
昨日、家に帰る途中で道に落ちてた手帳を見つけた
赤い表紙をしてたからかなんとなく目についたんだけど、気が付いたらそれを拾って鞄の中に入れてたんだ
ちなみにこういうやつ
(手帳の写真・現在は削除されている)
5名無しのオカルトマニア
>4落とし物を持ち帰るとか、何やってんだよwww
6名無しのオカルトマニア(主)
>5自分でもどうしてそんなことしたのかわからない
家に帰ってから兄貴にツッコまれたんだけど、どうしてこんなものを拾ったんだろうって自分でも疑問に思った
7名無しのオカルトマニア
それ、もしかしてその手帳に誘導されたとかじゃないか?
8名無しのオカルトマニア
催眠とか洗脳みたいな? そういうヤバい力を持ってる手帳ってこと?
9名無しのオカルトマニア(主)
>7かもしれない。こいつ、マジでヤバい品だと思う
何度捨てても手元に戻ってくるんだ
10名無しのオカルトマニア
>9その話、詳しく聞かせて
11名無しのオカルトマニア(主)
手帳の中身に何も書かれてないことを確認した後、興味がなくなったから最寄り駅のゴミ箱に捨てたはずだった
でも、会社に着いて鞄の中を確認したら捨てたはずの手帳が入ってたんだ
その時は別の物を捨てちゃったかな? と思って深く考えなかったんだけど、昼休みに会社近くのコンビニで間違いなく捨てたはずのこの手帳が昼休み明けに戻ったら自分のデスクの上に置いてあって戦慄した
12名無しのオカルトマニア
>11何それ、怖過ぎるだろ
13名無しのオカルトマニア
>11捨てたのに戻ってくる手帳ってこと?
なんか呪いの人形とかにありがちな設定だな
14名無しのオカルトマニア(主)
>13戻ってくるっていうより、追いかけてくるって感じ
その日、流石にこの手帳が気味悪くなって会社に置いていくことにしたんだけど、家に帰ったら玄関に置いてあった
翌日は家に置いていったはずなのに鞄の中に入ってて、マジで気が狂うかと思ったわ
ここから手帳を拾った人物(Aと記載)はスレッド住民と相談しつつ、手帳を破棄しようとする。
Aは住民から提案された裁断、焼却といった手段を採り、バラバラにした、及び灰になるまで燃やされた手帳の写真をスレッドに投稿していたが、手帳は翌日には何事もなく復活していたという。
この頃からAの様子がおかしくなり、書き込みからもAの精神が追い詰められていることがわかるようになる。
以下、幾つかの書き込みを抜粋。
511名無しのオカルトマニア(主)
何も書かれてなかったはずなのに、手帳のページに文字が見える
『死ぬ』とか『どうして』だとか、赤い文字で書かれてる
(白紙の手帳の画像・現在は削除されている)
528名無しのオカルトマニア(主)
みんなには文字が見えてないってこと? 見えてるのは私だけ?
これは幻覚? 怖過ぎて家の窓から捨てたはずの手帳がもう戻ってきてる。これも幻覚? もう何もわからない
580名無しのオカルトマニア(主)
人の影が見える
何を言ってるかわからないけど声も聞こえる
近付いてきてる
怖い、助けて
624名無しのオカルトマニア(主)
こないで、たすけて
あいつがくるたすけて
この書き込みを最後にAはスレッドから姿を消した。
リアルタイムでAの書き込みを目撃した住民たちはこれが本当の話なのか半信半疑であり、Aが消えた後も議論が続けられた奇妙なこの話は『追ってくる手帳』としてオカルト板で有名になり、次々と自分もこの手帳を拾ったという人物が書き込みを始める。
乱立されたスレッドは釣りスレ(嘘としてこの話題を取り扱うもの)が大半で、よくある創作怪談として片付けられることになった。
同時期、神奈川県の特定地域で事故に遭い、意識不明になった患者が搬送されるという事件が多発するようになる。
事故の内容は交通事故、転落事故と様々であったが、目撃者の証言によれば被害者たちは皆、何かから逃げるように必死に走っていたという。
この不可解な事故の影に禍津呪物が存在している可能性があると判断した警察からの要請を受け、調査機関が出動。
上記の書き込みを発見すると共にIPアドレスを辿り、Aが事故が多発している地域に住んでいることを突き止める。
その後の調査により、Aの書き込みが途絶えた数分後に事故が発生し、意識不明となった患者が搬送されていたことが発覚。
この人物がAであると判断すると共に、多発する事故の元凶が『追ってくる手帳』であるとの判断を下す。
同時に『追ってくる手帳』を正式に禍津呪物として認定し、その確保に動き出した。
・現在の状況
『追ってくる手帳』に関連するスレッドの書き込みを調査し、A含む三名の事故に関する手掛かりがないかを探っていた最中に四人目の被害者が出てしまう。
その後、四人目の被害者となった女性の妹とコンタクトを取ったところ、彼女が現在の手帳の所有者であることが判明。ある程度事情を話し、手帳を回収することに。
しかし、直後に手帳は我々の下から消え、再び彼女の下に戻ってしまった。
この呪物は我々の手に負えないとして、禍津呪物回収の専門家である
・依頼内容
禍津呪物『追ってくる手帳』の回収。及び元凶の調査。
呪物に憑りついている存在と接触した場合、その対処は筧氏の判断に委ねる。
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