第六回 忘れじの吸血鬼

 第六回、始まるよ~。

 

 前回前々回と『ブレイド』の話をしました。

 『ブレイド』とは何か?

 大雑把に言えば、吸血鬼と、それを狩る者の話ですね。

 なんだかよくわかんないけれど、この両者の対立構造って妙に惹きつけられるものがあります。

 

 それはたぶん、創作物で「吸血鬼」って存在を、創作者が魅力的に描き過ぎたからじゃないかって思ってたりします。

 夜の帝王、闇の支配者、不死王etc.……。

 連中に関する二つ名って、なんか尊大だったりカッコよかったりで、それこそ中二心を刺激してくるものが多い。

 そういう異名にのっかるように、ゲームとかの設定だととにかく強者・恐者になってる。

 あんなに弱点やら制約の多い、つまりは対応の術の多い存在なのに?

 まぁ確かに、それらのウィークポイントを補えるだけのストロングポイントを持っていたりはしますが、そこまでのものか?

 ……結局、存在をロマンにしているだけだよね(苦笑)

 

 個人的にはあんなん、人様の血を吸えなきゃ生命――そもそもを生きている存在として扱ってもいいものか?――の維持もできない、偏食の寄生生物程度にか思っていません(爆)

 

 他の皆様がご自身の作品でどれだけ荘厳で美麗な吸血鬼を描こうが、それは自由なので、どうぞお好きに。

 こっちがどうこう言うことじゃないですからね。

 だけど私は自作に吸血鬼を出すことがあったら、上記のように大したことのない存在として描くと思います。

 いいじゃん、ただの寄生生物な吸血鬼が居たって。

 私の作る世界じゃ、そういう存在なだけなんですから。

 

 という訳で今回は、吸血鬼あれこれを話そうかと。

 いや~、長い枕だった(笑)

 

 私的に吸血鬼というモノを、初めて意識したのは映画だったかな。

 たぶん、テレビの洋画番組で見た吸血鬼物。

 昔は今のCS並みに、地上波で映画を放送してくれていたんですよ。

 夜のゴールデンタイムにやってた、なんとか洋画劇場とかなんとかロードショーの他にも、土曜日の深夜帯、平日の午後なんかに。

 特に平日の午後にやってたローカルの番組は、白黒フィルム時代のやつとか、C級以下の粗造乱造されてた時代のが放送されてた。

 平日午後だから、学校休んだ日とか早く帰れた日なんかでしか見れなくて、見れても終盤だけだったりとかで、それでも子供的には凄くワクワクしてました。

  

 でまぁ、そういう番組プログラムの中に、モンスタームービーやホラームービーの一環で吸血鬼物もあったと。

 なかでも印象強く受けたのは『吸血鬼ドラキュラの花嫁』

 『吸血鬼ドラキュラ』の大ヒットを受けた第二作にして、柳の下の泥鰌で作られた亜流。

 タイトルにドラキュラが入っているけど、ドラキュラじゃなくてマインスター伯爵だったり、『吸血鬼ドラキュラ』に比べると明らかにランク落ち作品なんですよ。

 でも製作が英国老舗のハマーフィルムなので、他の製作会社――ジャンル映画マニアの地獄と言われるスペインとか――よりは醸し出すムードとかは明らかに上でした。

 

 なんと言っても吸血鬼を追うハンターがヘルシング教授で、演じるのが名優ピーター・カッシング!

 もうね、ヘルシング教授といえばカッシング、カッシングといやヘルシング教授ってな具合。

 紳士然とした佇まい、インテリといった風貌、そしてけっこうアクティブ。

 スタイリッシュでカッコよいのだ。

 

 実質、この作品の主役はヘルシング教授で、彼がマインスター伯爵と彼の僕たる花嫁たちを倒すべく動く話。

 この二番煎じで格落ちのお話のどこに私が惹かれたのかというと、ふたつ。


 ひとつはなんだかんだで逆襲され、花嫁のひとりに噛まれてしまうヘルシング教授。

 そのとき彼がとった行動が凄い。

 噛まれた傷跡を焼いてしまうのだ。

 激痛に苦しみながら教授は持っていた聖水を焼いた傷口にかけるのですよ。

 あら不思議。なんと噛まれた牙のあとも火傷もきれいになくなってしまったではありませんか。 

 テレビで見ていてね「こういう対処の仕方もあるんだ!」と、少年の私は感嘆してしまったわけ。

 邪な目で振り返れば、ロマンスグレーのヘルシング教授が、もだえ苦しむさまに、言葉にしにくいクるものがあったともいえる(自爆)

 

 もうひとつはラスト。マインスター伯爵の倒し方。

 燃え盛る風車小屋、逃げ去ろうとしているマインスター伯爵、とっさの判断でヘルシング教授は風車に飛びつき十字の形にする。

 十字の影に当てられ、マインスター伯爵は滅ぶ。


 吸血鬼に噛まれた際の対処法と、十字の影を当てて滅ぼすという倒し方。

 この二点で、格落ち二番煎じ作品にすぎない『吸血鬼ドラキュラの花嫁』は、私にとっては思い出の逸品となりました。


 あと異色作中の異色作『ドラゴンVS七人の吸血鬼』も忘れ難い。

 斜陽のハマーフィルムが香港のショウブラザースと手を組んだ作品で、ブームが来ていた香港カンフーアクションとドラキュラを組み合わせたゲテモノ。

 

 これもテレビで見たんですよ。テレビ朝日の土曜ワイド劇場の時間帯で。

 実に小学生や中学生男子が喰いつきそうなタイトルと内容でしたから、月曜日に学校で「あれ見たか? あれ見たか?」と話題になってましたねぇ(笑)


 作品としては末期も末期だから、お粗末なものでして、なぜかドラキュラが中国に渡ってて、それを追ってヘルシング教授がやって来て、地元のカンフー軍団と協力して、ドラキュラとその配下となったキョンシーたちと戦うってもの。

 

 ね、粗筋だけで妙な中二魂が刺激されてきませんか?(笑)

 

 とは言え、ヘルシング教授にはカッシング卿を迎えるとか、変なところで豪華だったり、集められたカンフー軍団の主役級が乱戦時に相打ちであっさり死ぬとか、これまたおかしなところで、心に楔を打ち込んできやがったんですよ。

 

 ネタものにすぎないのに、それだけで終わらない、確かな傷跡を残す。

 これも忘れじの逸品でした。

 

 雑とした『吸血鬼』編は終わり。

 次は『狩る者』側のお話をしましょうか。


 ではまた次回。

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