第1章 イルベン刀バブル編 第7話 代物弁済ばかり
「いらっしゃいませ。ようこそチュプリハウスへ。本日はどの娘をご指名ですか?」
さっそく新人っぽい女の子が聞いてくる。
「まずは料金について聞きたいんだが」
「承知しました。当店は店の女の子と一緒に入浴をするなどして楽しむところでして、」
「そんなの聞いてないよ。料金だよ。」
なんだこの女。コミュニケーションが取れてないだろう。
「それがですね。今とてもお得なキャンペーンをしておりまして、現金前払いの方に対しては、指名料無料キャンペーンを実施しています。加えて、現金払いの方限定、90分コースまで基本料金同額36000サラリーでございます。現金払いの方だけですよ。」
「現金払い以外では、どのような決済方法を用意しているのかい?」
「手形で決済する人や、つけで決済する人や、いろいろいまして。最近、つけがたまった客が、イルベン刀の権利書で代物弁済してくるんで、どうしたものか、と思ってるんです。」
「売ればいいじゃねーか。今イルベン刀は高いだろう。」
「こら、あんた。何口滑らせているんだい?あんた、まともに会話できない、客相手の接待もできない上に余計な事言うんやないよ。」
出てきたのは中年の女郎。このずんぐり女は管理職だろうか。それともオーナーか。
「お客さん、すまんね。うちは今現金前払いしかやってないよ。入るかい?」
少しこの女郎と話してみるか。
「ちょっと迷ってまして。今ちょうど現金を持ち合わせてなくて。ただ、いい話ならありますよ。」
「ほーん。現金がないなら帰ってくれ。」
「本当にいいのですか。俺を帰らせて。ちょっといい話がありましてね。今日、『参拾壱代天玄』が1320万サラリーで売られてましてね。」
「ほーん。『参拾壱代天玄』がそんなに安くね。そりゃちょっとヤバいんじゃないかい。やっぱりイルベン刀なんかで代物弁済受けるんじゃないよ。」
「それがそうとは言えませんよ。今市場にいる人間はイルベン刀の価値をあまり理解せず、とにかく投機で買ってるだけですよ。そう考えると、ちょろいもんですよ。とにかく高くなるって思って買っている奴らをうまく転がせば、まだまだイルベン刀は売れますよ。」
「まあ、あんたの言うとおりだけどさ、」
「女将さん。明日イルベン刀の権利書売りましょ。おいら、もう給料待てないよ。」
「こら。とんでもないこと言うんじゃない。何てこというんだあんた。」
「給与未払いですか。そんな店に入るのはちょっと…」
「次来るときは現金用意しな。それから、キャンペーンはもうじき終了だからね。」
この店にはイルベン刀の権利書がだぶついていて、現金は乏しい感じか。これはいい収穫だ。案外ヴィオラのお姉さんを取り返す糸口が見えてきたな。
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