第1章 イルベン刀バブル編 第3話 まずは服装を改めよう

ヴィオラのアパートは案の定ぼろいな。4階のワンルーム。トイレは共用。風呂なし。物もあまりない、貧民の家って感じだな。

「生活が苦しいんだな。ヴィオラ、全然稼げてねーだろ。」

「しょうがねぇだろ。僕ができる仕事なんて、二束三文の日雇いぐらいなんだからよ。」

「そういうことなら、所持金も対して期待できねーな。」

「僕も頑張ってんだぞ。30万サラリーも貯めてるからな。」

「30万じゃあ、お姉さんやイルベン刀なんか買えねーだろ。せいぜい1、2カ月分の生活費程度だよな。」

「うぐっ。」

やはり図星か。適当に言ったら当たったか。

「話は変わるが、イルベン刀の権利書はどこで取引されているんだ?」

「なんか、市場があるらしいんだ。市場は空いている日や時間が決まっていて、始まった瞬間、大人たちが押し寄せてるから、場所は簡単にわかる。」

「そうか。ということは、ディーラーがいるってことか。それか、せりみたいな方法で取引しているか。」

「何言ってんだ。アツム。僕も市場に一度行ったことあるけど、売りたい奴が権利書見せて、買いたい奴が手を挙げて値段言っていたよ。僕が行ったときは800万サラリーでイルベン刀が取り引きされていたぞ。」

「それでもだ、30万あるだけ上等だ。これを俺に託してくれ。」

「さっきも言っただろ。30万じゃ、イルベン刀買えねーのに、何に使うんだ。」

「おい、ヴィオラ。まずは服屋に行くぞ。」

「アツム。だましたな。服買ったら、イルベン刀代なくなるだろ。」

「イルベン刀買う金は服買えば調達できる。」

服装の大事さ、身だしなみの重要性。貧民の子供にはわからんか。信用は身だしなみからだというのに。

「ヴィオラ。服屋行く前に、顔と髪は洗っていくぞ。」

ヴィオラは桶を持って井戸に行き、手際よく水を汲んで戻ってくる。ハンチングを脱いで顔を水に浸す。それから髪を水にさらし、てきぱきと髪を洗っている。

「ヴィオラ、髪長いな。お前、女か。」

「僕は女の子だよ。」

「そうか。」


服屋

「いらっしゃいませ。って、なんだ、薄汚いガキか。」

「店員さん。30万サラリーで、俺とこの子の新しい服用意してくれ。靴も買えるか。」

「そういうことですか。30万サラリーなら、1着ずつではありますが、そこそこいいスーツなどが買えますよ。」

「30万全額つぎ込むから、買える服や靴で一番いい物くれ。」

「かしこまりました。」


「いかがでしょうか。お客さん。」

「きれいな身だしなみになれた感じがするよ。このスーツいいな。」

「ていうか、何で僕はジャンバースカートなんか着なきゃいけねーんだよ。」

「きれいな身だしなみってもんはこんなもんだろ。これから金持っている奴の所に出ていくんだろ。」

「でもさ、こんな女っぽい服着なきゃいけねーのは腑に落ちないよ。」

「場に応じた服装ってもんがあるんだよ。さっきまで着ていたようなボロ服の人間、商売する場所に来ている人が相手するかよ。」

「しょうがねーな。アツムの言う通りにするぜ。」

「お客さん、30万サラリー、払ってください。」

俺は30万サラリーを店員に渡す。

「じゃあ、これが領収書。またお越しください。」


きれいな服も買えたし、これから市場に向かうか。

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