第12話

柔らかな日差しが、道場の障子越しに差し込んでいた。静かな空間にお茶の湯気がゆらめき、二人の会話を包み込む。


幾夏は床板木に座り直し、軽く一息ついた。


「お茶もいただいたし、話も少しできたから…そろそろ帰ろうかな」


八音は静かに頷きながら、声をかける。


「結局どうするの?やめるの、それともやめないの?」


幾夏はしばらく考え込むように目を伏せた後、ゆっくりと答えた。


「やめることはやめるんだよ。ただ、話した通り合法的組織事業形態に変わるから…基本的には一般社会に溶け込むような組織になると思う」


八音は少し驚いた様子で訊ねる。


「組閥は解散するってこと?」


幾夏はうなずいた。


「そう。あの頃のやり方はもう終わりにする」


「じゃあ、幾夏はどうするの?」


「私は…タレントのマネジメントかな。あとは営業とか、会社の事業運営とか色々やることはあるよ」


八音は微笑みながら言った。


「大変そうだけど、タレントがいるならなんとかなるんじゃない?」


幾夏は少し笑みを浮かべて、小さな声で言った。


「実はね、手伝ってほしいんだよね。八音に」


その言葉に、八音は少し戸惑いながらも正直に答えた。


「私、まだ高校も終わってないし、大学にも行きたいから…正直無理かな」


幾夏はそれを聞いて、軽く笑った。


「だと思った」


二人の間に柔らかな沈黙が流れる。


「でも…いつか、また協力できる日が来たらいいな」


幾夏もそれに応えるように、穏やかな笑みを浮かべた。


「うん、その時はよろしくね」

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